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ザ☆旅行記Ⅳ カオス・スペシャル  作者: 小宮登志子
第5章 カトリーナ学院と親衛隊と……
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財政健全化の道筋

 カオス・スペシャルは、非常によく売れた。初回分は、はやばやと完売し、G&Pブラザーズからは「早く2回目の分を送ってくれ」という催促が毎日のように届いた。さらに、「割増料金を払ってもいいから、とにかく早く大量にほしい」という要望も寄せられたので、わたしは急いで魔法特待生の居残り特訓の場に赴き、

「悪いけど、もう一回……で済むかどうか分からないけど、お願い」

 と、もう一度、マリア、メアリー及び魔法特待生に特別課題の成長促進魔法合宿コースを頼み込んだ。

 そのおかげもあってか、アーサー・ドーン株式会社の売上高、経常利益は飛躍的に伸びた。会計帳簿を見ていると、自然と口元がほころんでくる。

「マスター、このところ、顔の筋肉が緩みっぱなしだよ」

 プチドラには冷やかされるけど、通帳の預入残高が自然と増えていくようなもので、こればかりはどうしようもない。当のプチドラも、時折ラードが代金として持参する金貨の袋に頭から突っ込んで、愛おしそうに金貨の感触を味わっている。


「カトリーナ様、そろそろ、マーチャント商会への債務の今月分の支払時期ですな」

 執務室に「表」の帳簿を持って訪れるポット大臣の表情にも余裕が見える。つい最近まで、毎月の返済期日には、今にも首をくくりそうな雰囲気でやって来ていたのに。

 大臣は帳簿をめくりながら、上目遣いで提案する。

「最近は、財政に余裕が出てきたようです。こういうときこそ、財政健全化のためにも、債務を繰上返済すべきではないかと思うのですが。全体として見れば利息も少なくて済みますし」

「繰上返済? できるならしたいけど、お金の出所を尋ねられたらどうするの?」

「マーチャント商会にとっては貸した金が戻ってくるだけですから、おそらく、それほど深い詮索はしないと思いますが」

 カオス・スペシャルの収益は、「表」の帳簿上では、わたし個人がウェルシーで産出された宝石を購入し、代金を支払うという(非常に不自然な)形で処理されている。当然ながら、取引の実体はない。宝石産業の再生にはもうしばらく時間がかかりそうなので……ということでひねり出した、苦肉の策。

「詮索されなければいいけどね。盗人が馬脚を露わす時って、気が大きくなって金遣いが荒くなる時よ。マーチャント商会からは相当に恨まれてるはずだから、あえて危険を冒すことはないと思うわ」

「は、はあ……」

 ポット大臣は肩を落として執務室を出た。「とにかく財政健全化を図りたい」というポット大臣の気持ちは分からなくはないが、さすがに今すぐ繰上返済は不自然すぎると思う。多少の利息は我慢して、当初の計画のとおり、慌てず騒がずゆっくりと返済していこう。

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