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ザ☆旅行記Ⅳ カオス・スペシャル  作者: 小宮登志子
第4章 継続的供給契約
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継続的供給契約

 わたしたちは社長室に通された。デスマッチはソファに腰掛けて足を組み、

「取引とは、どういう……」

 と、言いかけたとき、ラードが落ち着かない様子で、デスマッチに何やらヒソヒソとささやきかけた。しかしデスマッチは、右手でラードを制し、

「まあ、いいではないか。どんな話か聞いてみてから判断しよう」

 なんだか奇妙なやりとりだ。ラードのやつ、一体、何を慌てているのだろう。ともあれ、わたしはバックパックからカオス・スペシャルが入った小さな壺を取り出して、机の上に置いた。

「ラード専務からきいていると思うけど、ぶっちゃけ人質交換の申し出は却下。それで、麻薬……じゃなくて、新型の滋養強壮剤を従来の麻薬の半値で卸売りすると提案したのよ。で、回答は?」

「何? 人質交換の話は聞いたが、麻薬とか滋養強壮剤の話は知らんぞ」

 デスマッチはいぶかしげにラードを見た。情報が伝わっていなかったらしい(あるいは、伝えなかった?)。あいつ、「社長と相談する」と言ってたのに、この会社はどうなっているんだか……


 ラードは、動揺しているのか、もともと醜い顔をさらに醜怪にして、

「それは、ですね…… とどのつまり、一応、その中身の確認と言いますか、薬物ですので、私の方で安全確認を行ってからと思いましてね。そういうことです」

「そうか。なんだかよく分からんが、まあ、いい。それで、その滋養強壮剤とは、どういうものなんだ?」

 デスマッチの目がキラリと光った。本質的に商人と言われるだけあって、本能的に金儲けのにおいを嗅ぎ取ったのかもしれない。

 わたしは壺のふたを開けてカオス・スペシャルを示しながら、これは麻薬ではなく滋養強壮剤であること、滋養強壮剤でありながら効能は麻薬と同様であること、従来の48%の卸値で提供できること等を説明した。


 デスマッチは、ひととおり説明を聴くと、

「要は麻薬なんだろう。しかし、本当に、麻薬じゃなくても…… 妙な表現だが、麻薬なんだろうな」

「人体実験……じゃなくて、臨床試験をしたから、品質は保証できるわ。従来のものより高品質よ」

「お姫様と思っていたら、あくどいことを考えるじゃないか。基本的には受けてもいいが、ひとつだけ……」

 デスマッチは、そう言って、価格の減額を要求した。つまり、値切りに来たわけ。言い分としては、「値下げして末端価格を従来の半分とすれば爆発的に売れるので、トータルで見れば儲かる」とのこと。また、直接口には出さなかったが、「実際に危ない橋を渡るのは自分たちだ」というニュアンスもにじみ出ていた。

 しばらくやりとりは続いたが、結局、デスマッチとは、価格を従来の卸値の35%とすることで合意し、その場でカオス・スペシャル継続的供給契約を締結して契約書にサインした。

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