G&Pブラザーズは健在
簡単にミスティアの町に入ることができたわたしたちは、早速、G&Pブラザーズの本部に行ってみた。でも、案の定、本部があった場所は更地になっていて、中に入れないようにロープが張ってあった。
「あらら…… 随分スッキリとしちゃって」
「そうですね。でも、多分、大丈夫です、カトリーナ様。なんとかなると思います」
メアリーは、わたしの手を引き、来た道を戻り始めた。その先にあったのは、冒険者総合相談所という看板がかかった怪しげな建物。これは、ひょっとして、(特にテーブルトークの)RPGでよくある……
「ここはいわゆる冒険者ギルドです。広い意味での冒険に関することならなんでもありという、つまり、なんでも屋的なところですが……」
と、メアリー。なんでも屋って…… 確かに、それ以外に言い様がないだろうけど。
わたしたちは冒険者ギルドの一般利用者向け窓口で情報料を支払い、G&Pブラザーズ本部の所在地を尋ねた。話によれば、本部は少し前に謎の大爆発事故を起こし、現在は商業地区の外れ(スラム街に近くなってしまったが)を仮の拠点として営業を継続しているということで、(別料金で)そこに至るまでの案内図を作成してもらった。
案内図に示されたとおりにしばらく進むと、「シーフギルド・ミスティアG&Pブラザーズ」という看板が掲げられた小さな建物が見えた。取扱業務として、(この前の同じように)身辺警護、債権取立、迷宮探索補助、特殊請負などが列挙されている。
「カトリーナ様、どうやら、この建物のようですね」
「そのようね。それじゃ、とりあえず中に入りましょう」
「でも、マスター、簡単に社長に会わせてくれないと思うよ。『謎の大爆発事故』もあったことだし」
プチドラがバックパックからひょいと顔を出した。
「会わせてくれないなら実力行使よ。適当に大暴れしていれば、社長が出ないわけにはいかないわ」
わたしたちは入り口のドアを開け、受付で、一言、「社長に会わせろ」。すると、当然ながら受付のギルド員は「なんじゃ、おまえらは」。そこで、プチドラは力を抑えた火炎放射でギルド員に火傷を負わせ、メアリーは騒ぎをきいて駆けつけてきたギルド員を魔法で吹き飛ばして壁に叩きつけた。そして、わたしたちは(厳密に言えばメアリーとプチドラが)、ギルド員をちぎっては投げちぎっては投げ……
そんな大立ち回りを演じていると、やがて、
「何事だ? 騒々しいぞ」
そこそこイケメンの男が激しく醜い男を伴って現れた。社長レオ・ザ・デスマッチと専務キム・ラードだ。わたしは少し怒っているようなフリをして、
「この会社はどうなってるの!? せっかく取引しようと思って来たのに、それが客に対する態度?」
「誰かと思ったら、ウェルシーのお姫様ではないか……」
デスマッチは、「ふぅ」とため息をついた。本当のところ、わたしたちは歓迎されていないのだろう。しかし、デスマッチはすぐに、表面上は取り繕って
「『出入り』としか見えなかったが、本当に取引する気があるのかね? 取引なら、話は聞くが」




