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ザ☆旅行記Ⅳ カオス・スペシャル  作者: 小宮登志子
第3章 麻薬ではなく滋養強壮剤
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キム・ラードのさらに暗い過去

 次は、キム・ラードの暗い過去。なんだかあまり気が進まないけど、レオ・ザ・デスマッチと同じような形でまとめておくこととしよう。


 キム・ラードが生まれたのは、ウェルシーより北方に点在する群小諸侯領の一つ、やはり混沌の勢力と国境を接していて、時々紛争が勃発しているところ。実は、彼の出生は祝福されたものではなかった。あえて言えば、「生まれてこないほうがよかった」と、同郷の人たちは言っている。

 領主には、たいそう美しくて心の清らかな娘が一人だけいた。その姫君は誰にでも別け隔てなく接したので、住民からは「女神様」と慕われていた。誰もが姫君の健やかな成長を祈念し、幸せな結婚を予想していたが、事件は起こった。事もあろうに、外出中の姫君を混沌の勢力が誘拐してしまったのだ。そして、何ヶ月もたって、ようやく救い出された時には、姫君は混沌の子を身ごもっていた。その子こそ、キム・ラード。


 こうしてこの世に生を受けたキム・ラードの一生は、必然的に苦難の連続となる。母親(姫君)はラードが5歳の時に死亡、以後、祖父(領主)が後見人となったが、生物学的に不可避的な醜い容貌もあり、住民からは露骨に嘲笑されたり罵倒されたり石をぶつけられたり、散々な目に遭わされてきた。しかし、誰にでも長所はあるもので、ラードには、類まれな魔法の能力があった。

 ラードは15歳の時、魔法の修行のため故郷を出た。ただ、実際のところは、身の危険を感じての逃亡に近い。住民は魔法を自由自在に操るラードを恐れ、ラードを殺せという嘆願書を何十通も領主に提出していたから。


 ラードは帝都で魔法アカデミーの門をたたいた。魔法アカデミーは皇帝直属の魔法使い教育機関で、卒業すれば、帝国の高級官僚として採用されたり、諸侯の顧問として採用されたりと、ばら色の未来が待っていた。しかも魔法の力があれば、種族・年齢・経歴等は一切不問という建前だった。

 でも、それは本当に建前に過ぎなかった。ラードの能力は魔法アカデミーでもトップクラスだったが、ハーフ・オークというだけで学友からも師範からも毛嫌いされ、あまつさえ食事に毒を盛られることもあった。

 結局、ラードは魔法アカデミーを去らざるを得なくなった。記録の上では「一身上の都合」となっている。その際、何人もの師範を血祭りに上げ、「いつの日か必ず、絶対に復讐してやる」という言葉を残していったとか。


 その後の消息は不明。そして、数年前、レオ・ザ・デスマッチとともにミスティアに現れ、シーフギルド及びミスティアの裏社会を牛耳ったということで、これ以降はデスマッチの経歴と重なる。話によれば、ラードは元剣闘士のデスマッチよりも凶悪で、特にヒューマンに対しては情け容赦ないらしい。彼の生い立ちを考えれば、当然かもしれないが。


 公式な記録や裏の世界の噂話などからキム・ラードについて確認できた情報は、以上のとおり。

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