猟犬隊員の行方
わたしはハーフ・オークをにらみつけた。が、すぐに耐えられなくなった。ファンタジーの世界だから、あえて(「あえて」は何度目だろう)言おう、ハーフ・オークはこの世のものとは思えないほど醜い。すぐにギブアップ、わたしはポット大臣に顔を向け、
「ねえ、一体、何があったの? いきなり話し合いとか殴り合いとか言われても……」
「何と言われましても、そもそもハーフ・オークの分際でウェルシー伯の館に足を踏み入れるなど、絶対に許されません!」
「はい?」
そもそも論を理由にされても、分からない人にはサッパリ分からない。わたしが首をひねっていると、プチドラがわたしの肩によじ登り、
「要するに、ハーフ・オークは最下層よりもさらに下の階層、牛馬にも劣るという位置付けなんだ。そもそも論として、そんな下賤のヤカラが貴族の館に乗り込んでくるのは論外ということ」
なるほど、この世界の身分秩序が根拠なら、そういうものだろうと納得する以外ない。
ポット大臣に現状に至る経緯を確認したところ、早い話、ハーフ・オークがやって来て「ウェルシー伯爵と会って話がしたい」と言ったので、ポット大臣が「無礼者、立ち去れ」と一喝したら、とりあえず錫杖で一発殴られ、館の警備に常駐している猟犬隊とハーフ・オークの乱闘が始まったということ。でも、今の話から常識的に考えたら、悪いのはこっちではないかしら……
わたしは「ふぅ」とため息をつき、
「分かったわ。話くらいなら聞いてやるから、執務室までいらっしゃい」
わたしはハーフ・オークを執務室に招き入れた。なお、プチドラは当然として、ドーンも一応、同行している。
「私はG&Pブラザーズ専務取締役キム・ラードだ。先刻も申し上げたように、代表取締役社長レオ・ザ・デスマッチの命を受け、我が社と伯爵殿の間の懸案事項を話し合いに来たのだ」
G&Pブラザーズ本部は完全に破壊されたはずだけど、やはりと言おうか、少なくとも社長室にいた2人は無事だったようだ。
「懸案事項って、損害賠償のこと? ビタ一文負けられないからね。さっさと払いなさいよ」
「いや、そうではない。厳密に言えば関係するがな。まあ、聴きたまえ、懸案事項というのは、こういうことだ。近頃、伯爵殿の配下、『猟犬隊』と名乗る連中が、総数12名、我々の縄張り内に迷い込んでしまったのだ。我々としては、畏れ多くも伯爵閣下の手足、猟犬隊の方々に傷ひとつつけてはならぬということでな。誠心誠意お世話しながら、我が社に滞在していただいておるというわけだ。」
「ゲッ!!!」
ドーンは驚きの声を上げた。つまり、猟犬隊員12名はG&Pブラザーズに拉致されたということではないか。キム・ラードは「ヒヒヒ」と下卑た声を漏らした。
「我が社は営利企業、故に、いつまでも善意で猟犬隊の方々をお預かりしているわけにいかないのだ」
ラードは激しく醜怪に、ニヤリ。言いたいことは……大体、想像がつく(想像したくないけど)




