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ザ☆旅行記Ⅳ カオス・スペシャル  作者: 小宮登志子
第3章 麻薬ではなく滋養強壮剤
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滋養強壮剤の完成

 館に帰ってからしばらく、この日も、いつものように、

 ……カリカリカリ…… ……カリカリカリ……

 執務室からは羊皮紙に羽根ペンを走らせる音が響いていた。書類に目を通してサインするという、退屈な午前のノルマ。面倒だけど、わたしの名前の借用書が紛れてたりするかもと思うと、他人に任せるわけにはいかない。

 ミスティア訪問を終えて幾日もたっているが、G&Pブラザーズからは、なんの音沙汰もなかった。本部の爆発・炎上の際、本当に、ギルドマスターも巻き添えになったのだろうか。もし、そうなっていたなら、人質のギルド員の食費は惜しい。身代金を取れないなら、収容所送りを検討しなければならない。


 ……コンコン……

 突然、ドアをノックする音が聞こえた。

「いいわよ、入って」

「失礼します」

 ドアを開けたのは、メアリー…ではなく、エルフ姉妹の妹、マリアだった。この二人、容貌がとてもよく似ている。

「あら、あなたが執務室に来るって、珍しいわね。どうしたの?」

「はい、この前の、その、例のブツ…… いえ、え~っと…… そう、滋養強壮剤が完成しまして……」

「えっ!? 本当!?」

 わたしは思わず立ち上がった。そして、マリアのもとに駆け寄り、その手を握りしめた。

「ありがとう。意外と早かったわね。それで、例のブツ、麻薬…じゃなくて、滋養強壮剤はどこに?」

「はい、これから案内します」

 マリアはくるりと向きを変えて歩き出した。

 わたしはプチドラを抱き、マリアのあとを追う。マリアは魔法で障害物を感知しながら進んでいるのだろう。目は見えないはずだけど、足取りはしっかりとしていて動きも素早い。プチドラは何やら不安そうな顔で、

「でも、麻薬って…… 本当に、こんなことしていいのかな」

「いいのよ。あくまでも滋養強壮剤だから。麻薬じゃないわ。念のために強調するけど、麻薬じゃなくて、滋養強壮剤よ」

 もちろん、ばれたりしたら、非常にヤバイ話になるはずだけど、その時は、その時のこと。


 やがて、マリアはドアの前で立ち止まり、

「ここです」

 案内された先は、エルフ姉妹の部屋だった。丁度、部屋の中に並べられた鉢植えに、メアリーが水をやっている最中。

 マリアはおもむろに、机の上の小さな壺を手に取って、そのふたを開け、

「そして、これが、葉を乾燥させて粉末にした…… え~っと、滋養強壮剤です」

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