表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅳ カオス・スペシャル  作者: 小宮登志子
第2章 ミスティアG&Pブラザーズ
14/87

体重と同じ重さの……

「体重と同じ重さの金!?」

 驚きの声を上げたのは、社長椅子の若い男ではなく、激しく醜い男だった。実際、誰が見ても法外な請求だろうし、わたしもそのまま受け入れられるとは思っていない。とりあえず、言ってみただけだ。

 しかし、社長椅子の若い男は眉毛一つ動かさず、極めて冷静な口調で、

「なるほど、要求としては承知した。ただ、体重と同じ重さの金の価値に相当する損害が発生しているならば、証明してもらいたいものだな」

 と、若い男はからからと笑った。そして、

「金ではなく銀ならば、話は分からんでもない。こちらとしては、体重と同じ重さの銀であれば、損害賠償として支払うことも止むを得ないと考える。しかし、それが限度だ」

 と、強い調子で言った。賠償額を10分の1に(この世界における現在の交換レートによる)値切りにきたわけだが、現実的にはその程度が相場かもしれない。

 わたしたちは、結局、「ミスティアG&Pブラザーズは、ギルド員1名につき、その体重と同じ重さの銀又はそれに相当する額の財物を支払う」ことで合意した。そして、とりあえず、わたしたちが連れてきた人質3名を解放し、その合計体重の重さの銀の価値に相当する金の地金を受け取った。残りは後日ということで。


 こうして、まんまと人質3人分の身代金をせしめることに成功したわたしたちは、建物の外で待機していた猟犬隊員と合流した。うまくいきすぎて少し怖い気もするが、あとは、一応、追撃の用心をしながら、宿舎に戻って寝るだけ。

 その途中で、どうしても気になって仕方がないことがあって(ファンタジーの世界だから、あえて言おう)、

「誰か知らないかしら? 社長の椅子に座ってた男のほかに、もう一人、この世のものとは思えないほど、ものすごくキモイ男がいたけど、あれは、一体、ナニモノ?」

「あれはハーフ・オーク、すなわちヒューマンとオークの混血です。ヒューマン中心の社会では忌み嫌われていて、能力があっても表の世界では評価されません。ですから裏稼業に走るのは止むを得ないでしょう」

 メアリーが言った。(重ねて言おう、ファンタジーでなければ問題表現だけど)なるほど、ハーフ・オークなら、あの吐き気をもよおしそうな顔も納得がいく。

 プチドラはわたしの肩によじ登り、耳元でヒソヒソと、

「あのハーフ・オーク、魔法使いとしてはとても優秀だと思うよ。強い魔力の波動を感じたから」

 なるほど、優秀な魔法使いなら、プチドラとメアリーの魔力も感じ取ることができたかもしれない。あのハーフ・オークは2対1では危険と見て、勝負を避けたのではないか。これは推測だけど。


 翌日、わたしたちは、来たときと同じく大名行列のように隊列を組み、ウェルシーへの帰途についた。別れ際、ミスティア子爵は、再び5人ほどの孫を推薦した。何に対する推薦なのかはよく分からないけど、「とにかくよろしく」ということだった。一体、なんなんだか……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ