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ザ☆旅行記Ⅳ カオス・スペシャル  作者: 小宮登志子
第1章 街角の密売人
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財政は火の車

 柔らかな日差しを浴び心地よい風を受けながら、わたしはバルコニーからぼんやりと遠くを眺めていた。館は高台にあり、町を一望のもとに見渡すことができる。紆余曲折を経て、ともかくも爵位を授与され、この地ウェルシーに合法的な政権を樹立することはできたけど、財政は依然として火の車、非常に苦しい状況が続いている。

 その時、ポット大臣が帳簿を抱えてバルコニーまでやってきて、

「カトリーナ様、マーチャント商会の使者が参りました。いかがいたしましょうか」

「いかがって…… 借金の取立なら、払わなきゃ、しょうがないでしょ。払いたくないけど」

「承知しました。そのようにいたします」

 マーチャント商会とは契約を常識的なものに見直し、借金も大幅に値切ることはできたものの、依然として莫大な額が残っていた。

 混沌の軍勢との戦いで受けた被害は大きく、完全復旧までは道半ば。打ち続く戦争や抗争の中で巨大化・肥大化していく猟犬隊も、一応の秩序が回復された今となっては、財政圧迫要因になっている。恒常的に高収益を得られるものが何かなければ、この先、苦しい。

「困った……かも」

「かもね。でも、マスター、気長にいこうよ」

 子犬サイズのプチドラはバルコニーの手すりによじ登って言った。お気楽なものだ。


 その時、突然、中庭からボンという爆発音が響き、煙がモクモクと立ち上った。多分、メアリーの攻撃魔法の授業だろう。エレンのたっての願いで設立されたカトリーナ学院初等部は、今は財政的に大した負担ではないが、今後、校舎を建てたり中等部や高等部やアカデミーまで作ったりするとすれば、相当な資金が必要になるだろう。そのためには、この国の伝統、宝石産業が往時の勢いを取り戻さなければ。

「決めたわ」

「唐突だけど、一体、何を?」

「とりあえずミーの町と、それからウェルシー北西部の宝石産出地帯を視察する。復興の進み具合を見ておきたいわ」

「うん、そうだね。でも、マスター、いつものことだけど、迷子にならないようにね」

「そうだったわね、それならドーンに案内させることにしましょう」

 呼ぶとすぐにドーンが現れた。いつものように猟犬隊のユニフォーム、黒いローブを身にまとっている。

「これから町を視察しようと思うの。案内と護衛を頼むわ」

「わかりました。でも、ほんの数分、お待ちいただければと……」

 ドーンはそう言うと、あわただしく立ち去り、そして数分後に戻ってきた。何をしていたのか、ちょっぴり気になるけど、意味もなく他人のプライヴァシーに立ち入る必要はあるまい。

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