両親の教え
「まずはあらゆる力を使い、強引にでも籠に閉じ込める必要がある。大切なのは、エサは欲しがるだけ与えるということだろう。自由以外ならなんでも与えろ。時には鞭と鎖を、時には飴と金品を、敵となるものは二度と歯向かわぬよう排除しろ。そして――心の底から愛せ。愛、それがこの世で一番強いものだ」
◇◇◇◇
「財力と権力よ。それがなければ誰があんな――いえ。……人間は金銀宝石を目の前にちらつかせられたら飛び付いてしまうものなの。そして権力には逆らえない。財力と権力がこの世で一番強いものなのよ」
◇◇◇◇
「ということなの」
リーニは菓子をポリポリと食べながら、目の前に座る少年に話した。少年が「ふーん」と頷く。
「つまり、まずは軍事力でねじ伏せて、捕まえたら鎖を付けて拘束し、権力と金品をちらつかせて溺愛しろってことなのかしら?」
ねえケント、と言われ、少年――リーニの乳母ケティと赤騎士ランガの子であり、リーニの幼馴染でもあるケントは片眉を上げた。
「で、俺の力が必要か?」
「そうねえ。なんとかなる?」
「ああ、うちの隊に任せろ。綺麗に片付ける」
リーニがパンッと手を叩いて喜ぶ。
「さすが白騎士!」
ケントはまだ若いながら、その腕前は素晴らしく、しかも計算された美しい剣さばきで決して返り血を浴びない。大胆に敵陣に突っ込んでは返り血で真っ赤に染まる父親の赤騎士とは正反対であるところから、『白騎士』と呼ばれていた。
ケントが顎に手を当て、「そういえば……」と呟く。
「研究所のジンが、また新しい武器を開発したらしいぞ」
「え? 本当に?」
「ああ」
リーニは大きく頷いて立ち上がった。
「よし、善は急げ! さっそく準備に取り掛かって!」
「分かった」
ケントが出ていき、リーニはテーブルの上に置いてあった姿絵を手に取る。そこには爽やかな笑顔が素敵な青年が描かれていた。
「サン王子、待っててね」
リーニは姿絵の青年――トバッチ国の第一王子にチュッと口づける。
「すぐに迎えに行くからね!」