3文 悲劇の過去
以外としっかりしていそうな漆喰の壁で シンプルだった 庭は銀沙灘と向月台があり 銀沙灘は規則正しく並んでおり とても綺麗だ 石畳が入り口まである
「降りれるか?」
「…当たり前だろ!」
秀秋は意地を張り、足を一生懸命動かし 降りようともがくが足が縺れて真っ逆さまに落ちた
ゴンっと 鈍い音がし 政宗と その他の人が目を瞑る
「…大丈夫か?」
「…うん」
すっかり元気をなくしてしまった秀秋はふてくされながらも、石で出来た数段の階段を上った
馬は小十朗が引き 小屋へと戻す為に別の方向へ向かった
「すっげぇ…」
銀沙灘が夕日を浴びて輝いた そして ガラガラと昔ながらの音を立てながら 扉を開くと 現代には無い造りがあった
玄関が土で固めてあり 廊下は吹きさらしになっているのが1目で分かった 玄関の先には直径50㌢はあろうかと 柱が天井に向かってつき出ていた
「こっちだ」
政宗は足袋を脱ぎ捨てると 音を立てずに ずかずかと縁側を歩いて行った 秀秋も慌ててその後を追う
すると政宗は前触れもなく、兜を取った 黒い豊かな髪が舞い上がる
「暑かったなぁ…」
「ちょ…その眼帯ってなんなの?」
すると 政宗は顔色を変え、ビクッと肩を震わせた
「…なぁ 教えてくれよ」
「…お前 人に聞いて良い事と悪い事があるんだ」
「は…?」
歴史に疎いので 彼の過去は知らない
「…なぁ 教えてくれよ」
何度も秀秋は交渉するが 政宗は口を硬く閉じたまま 一言も喋ろうとはしなかった
「なら条件付で」
と 今まで黙っていた政宗が口を開いた
「え…?」
「つまり お前が俺のこのわけを知るのに対して お前がここに来た理由を教えろ!」
ここに来た理由… 俺は明から来た事になってるから… 適当に考えればいいか それで彼の過去が分かるなら
「乗った!さぁ 教えるから教えろ!!」
「ふむ… 中々物分りが良い子供だな」
政宗は目を細め 笑うと ある一室の前で止まった
「ここ」
障子を開けると そこには木の床壁に 甲冑が置いてあった 馬鹿でかい蝋燭が2本 蝋燭立てに乗っている
政宗は鎧を脱ぎ、兜を棚の上に乗せると ラフな格好に着替え 部屋の真ん中で胡坐をかいた
「お前も座れ」
「…?!」
言われるがまま、慣れない正座で政宗の正面に座った
「よし じゃぁまず お前から離せ 嘘をついたら即、切り殺す」
秀秋はゾっとし声を張り上げ「はいいい!」と 声が裏返るほど叫んだ
「その心がまえ いいな」
「…じゃぁ 俺が来た理由は…………」
なかなかいい文が見つからず 沈黙が走った 唾を飲み込んだ音が聞こえそうなほどだ
「…?やっぱり言えないのか」
「いやいやいやっ!!言います言います!」
「なら早く言え」
「…日本の……愚かな…戦乱の世を…上の人から見てこいと言われて…」
我ながらいい言い分だと思ったが 政宗にはどうなのだろうか
「…は…はーっははははっはっはははは!」
「…?」
いきなり笑い出すので 頭でもおかしくなったのではないかと思った
「はぁ…愚かな…か 面白い 俺のも教えよう」
ドッと 疲れが増した 緊張から開放されるのはすばらしい天国だ
「…いいか 良く聞け」
十数年前____
伊達政宗は 5歳の時に天然痘にかかってしまい 一命は取りとめたものの 失明した右目が飛び出してしまった
それを見た母は政宗との間を置いていた
まだ幼かった政宗は 心に深い傷がついた
「ってわけ」
「…自分でこういう風に語るのもどうかと…」
「まぁ いいっていいって」
と 笑い飛ばした