1話
はじめましての方ははじめまして 柴わんこです。
この作品にはいちゃつき成分が意外と豊富なので気をつけてください。
「ねぇー起きてよ朝だよ?」
とある一室に男子と女子がいた。
「ねぇー起きてよー」
「あと5分……」
彼女は今寝ている彼を起こしに来たのだが、彼は『まだ寝かせてくれ』と起きる気配がない。
なので仕方なく彼女は
「じゃあその5分だけ布団に入ろっと」
と彼の布団にスルスルと潜り込んで行った。
「……って『その5分だけ布団に入ろっと』じゃねーよ」
そう言うと彼は勢いよく布団を剥いだ。
「え~?まだ5分経ってないでしょ~?寒いからほら掛けて」
そう言うと彼女は『布団くれー』と言わんばかりに両手を伸ばした。
「ったく。もう寝てられないだろ?ほら立って、俺の準備が出来次第、一緒に行こうな?」
そう言いながら彼は手を差し出す。彼女は仕方ないなー、と彼の手を取って立ち上がった。
◆
「ねぇー眠い。何で5分くらい寝かせてくれないの~?」
この不満そうな彼女の名前は立花紗希高校2年生。
「あんなことしたからだろ?」
そう言い返した彼の名前は佐藤慧太同じく高校2年生。
「……眠い~おんぶして」
そう言われ慧太は呆れた顔をし反論する。
「断る」
「じゃあ今日の夕飯なしね」
「ちょ、それ反則……ごめんて、おんぶさせてもらいます」
「おやすみー」
仕方なくというかほぼ強制的にというか慧太は紗希をおんぶして登校するハメになった。
「あぁ~重いなぁ」
慧太がそう言うと紗希は無言で慧太の頭をぺしぺしと叩き始めた。
「冗談だって」
そう言うと叩いていた手が止まる。
「んー?きょうもラブラブだねぇ慧太君」
二人をからかう男子生徒が現れた。同じクラスメイトの仲間だ。
「はぁ?うっせーよ結構重……くはないけどさぁ」
『重』その言葉に紗希が反応する。女子にとって『重い』は禁句でありNGワードだ。
「……聞こえた。いま慧太『重い』って言おうとした」
そう言いながら頭を起き上がらせ、右手で慧太の頬っぺたを摘んだ。
「お、紗希さんおはよう」
いたたたた痛いってば、とヘルプを出す男に構わず、今起きた紗希に対しておはようとあいさつをするクラスメイト。
「ん?おはよう」
彼女にあいさつ出来て少し機嫌のいい彼とは対して紗希はそっけなく返す。
あいさつが出来て満足したのか、じゃ俺邪魔になるから先に行ってるわ、と彼は慧太に言った。
「あぁ待てよ、行くついでに俺と代わってコイツを連れて行ってくれ」
彼はそう慧太に言われ背中に背負ってる紗希を見た。その彼女は『そんなことしたらダメ!がるるるッ!』と目で訴えていた。慧太の腰から下ろすことなんて事があれば人生という幕も下りるんじゃないだろうか。
そう思った彼は逃げることを決意した。
「あららーそんなことしたら俺死んじゃうかもね、じゃそういうことで」
そんなわけで学校へ向けて走り去っていく。
◆
過ぎ行く先輩や後輩から「ああいうのも悪くないかもしれない」と声が聞こえてくる。
いやいや、いいか、こいつ見た目の割に結構重たいんだぞ?普通逆だろ、意外と軽いのほうだろほら見ろよ額から汗出てきてるじゃねーか
「ん……」
俺の額にハンカチが拭き拭き、と。紗希だな。
「拭いてくれるのか?ありがと」
なんか気が利くじゃんかよ。
「一応妻としてね~」
妻としてね、か。妻っておんぶされて旦那の汗拭きなんてする?んなことどうでもいいか。
「……妻ねぇ。まぁ婚活しないですむからいいんだけど」
「余計な事言ってないで早く歩いて。足止まってる」
少しだけ止まったらこれかよ。
「少しだけの休憩に口を挟むな」
「じゃおやすみ~」
寝るな寝るんじゃない。
「はぁ、寝るのか、それにしてもよく寝るねぇ」
「旦那の背中が心地いいのよ」
「な、なに恥ずかしい事言ってんだよお前」
嬉しい事言ってくれるじゃん。でも首筋に息が当たってくすぐったいわ。
俺は一度紗希を抱えなおし、ため息を一つついてまた歩き出した。
面白いか分からないのでどうか感想をよろしくお願いします。
俺と彼女と妹と。もよろしくお願いします