【寿命という数字】
いつの間にか日も暮れてきていた。
森での実験を終え家に帰ってきたアリア。
「疲れた… 先にお風呂入ろ」
とお風呂に入る。
その時だった。
湯船の水に、
数字が浮かび上がる。
「……これ変えたらどうなるんだろ」
水の上に浮かぶ数字が、
10から30へ書き換わる。
湯船の水が急に鉛みたいに重くなる。
「あ… くるしぃ」
全身が押し潰される感覚に、
アリアは慌てて数字を戻した。
アリアは咳き込みながら、
湯船の縁を掴んだ。
心臓がまだバクバクしている。
「……死ぬかと思った」
湯気の中で、
自分の手をじっと見る。
「……笑えないんだけど」
戻すのが少し遅れていたら、
本当に死んでいたかもしれない。
湯船から上がり、
急いで体を拭く。
まだ少し足が震えていた。
部屋に戻ると、
ベッドへ倒れ込む。
「今日は色々ありすぎ……」
森での出来事が頭から離れない。
湯船の重さ。
あの押し潰される感覚。
思い出しただけで息が詰まる。
「でも……」
アリアは天井を見る。
「ちょっとだけ、面白いかも」
木の枝を強くしたり、
石を軽くしたり。
使い方次第では、
色んなことができそうだった。
重くなった水を思い出し、
アリアはぶるっと震える。
「今日はもう考えるのやめよ……」
疲労も限界だった。
そのままアリアは、
深い眠りへ落ちていった。
ーーーーー
翌朝。
「アリアー! 朝よー!」
母の声で目が覚める。
「んぅ……」
眠そうな顔のまま起き上がるアリア。
窓から朝日が差し込んでいた。
「やばっ、寝すぎた!」
慌てて着替え、
階段を降りる。
台所では母が朝食を並べていた。
「もう。最近ぼーっとしてるわよ?」
「ご、ごめん」
アリアは苦笑いする。
まさか数字を書き換える力に目覚めたなんて、
言えるはずもない。
父はパンを齧りながら笑った。
「まあ元気ならいいさ」
「今日は買い出し頼める?」
「うん、いいよ」
朝食を食べ終えた後、
アリアは家の手伝いを始めた。
薪を抱えながら、
アリアはため息をつく。
「ふぅ……」
額の汗を拭きながら、
薪を見る。
(これ軽くしたら楽なんだろうな……)
そんな考えが頭をよぎる。
だがすぐに首を振った。
(ダメダメ。ちゃんと慣れるまで変なことしない)
昨日の風呂事件が、
完全にトラウマになっていた。
すると母が笑う。
「今日は真面目ねー」
「いつも真面目だし!」
「はいはい」
少しムッとしながらも、
アリアは作業を続けた。
昼頃。
買い物用の袋を持ち、
アリアは村へ向かう。
小さな村道には人の姿も多い。
「アリアちゃん、おつかい?」
「うん!」
パン屋の前を通ると、
焼きたての香りが漂ってきた。
「うわぁ……いい匂い」
お腹が鳴る。
「あはは、買ってくか?」
店主のおじさんが笑った。
「今日はお母さんに頼まれた物だけ!」
「偉い偉い」
その後も野菜や調味料を買い集める。
袋は少しずつ重くなっていった。
「んしょ……結構重い……」
そこでふと、
アリアの視線が袋に向く。
(重さ……減らせたりするのかな)
試したい。
でも怖い。
もし変になったら、
買った物が全部吹っ飛ぶかもしれない。
「……やめとこ」
もし袋が爆発でもしたら最悪だ。
野菜まみれで村中に笑われる未来が浮かぶ。
まだこの力は、
何が起こるか分からなすぎる。
夕方。
買い物袋を抱え、
アリアは家へ戻っていく。
空は赤く染まり始めていた。
「ただいまー!」
「おかえりー!」
家の中から母の声が返ってくる。
帰宅したあとも、
アリアは無意識に自分の指先を見てしまう。
あの数字さえ見えなければ、普通だったのに
ーーー夜
自室で勉強をしていると、
虫を見つけた。
「これも数字が見えるわね」
虫の上に、
半透明の文字が浮かぶ。
虫 寿命:5
(単位は……日なのかな?)
「これも変えれるのかしら」
加減を間違えて寿命:5→0に変換してしまった。
その虫はそのまま動かなくなる。
その瞬間、
全身から一気に力が抜けた。
視界がぐらりと揺れる。
指先が痺れ、
呼吸が浅くなる。
「何これ?!」
倒れるアリア…
「動けない まずい…」
そして意識を失う。
数時間後…
「うーん 動ける?」
「寿命を変えたから……?」
アリアの背筋が冷える。
「この力……命まで触れるの……?」
「ふぅ 今日はもう寝よ」




