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そいつ

作者: りかい
掲載日:2026/04/07

4月3日。今日は大学のオリエンテーションがあった。そこで面白い出来事があったから日記に書こうと思う。日記と言っても、書くのは初めてだからあとで見たら文章がおかしいと思うところがあるかもしれないが未来の俺、許してくれ。俺が通う大学は比較的小さいからみんなの前で、自己紹介をする形式だった。好む奴はあまりいない。そして、つまらない。そう思っていると教授が「そろそろ飽きてきたから、次の奴、自己紹介と最近あった面白いことでも話してくれ」と言った。他のみんなも飽きてきてたのか携帯をいじり始めていた。その次の奴って人は真面目そうで紳士な感じがした。いきなり面白い話をしろって、彼もお気の毒だ。ゆっくりゆっくり歩いていた。下を向いたまま歩いていたため、表情はよく見えなかったが特に焦った様子もなかった。その人は咳払いをして話し始めた。

「じゃあ最近イラつくことがあったんですよ。その話を聞いてください。」

面白い話ではないのかとツッコミを入れたくなったが、少し興味を持ったので、携帯を置き目線を向け真面目に聞こうとした。周りの奴らは気にもせず、下の方でこっそり携帯をいじっている。「みなさんはどんな時にイライラしますか?、、、僕は努力を水の泡にされた時です。入学前に課題があったじゃないですか。僕は1時間ぐらいかけそれを終わらせました。機械が、苦手な僕にとってやっと解放されたという思いでした。ですがその時間は一瞬で無くなりました。回答した文章が消えていたんです。文字を消した奴とは長い付き合いで親しいはずだったんですがいくら冗談だとしても笑えませんでした。むしろムカついて殴ってしまおうとも思いました。ですがそこで殴ってしまったら、こちらが加害者になってしまうので、深呼吸をして一回頭を冷やしました。そいつとは腐れ縁ってやつでもう昔からずっと一緒にいました。ご飯の時も、寝る時も、お風呂だって、四六時中ずっと一緒でした。朝起こしてくれたり、勉強を教えてくれたりするいいところもあったんです。でも、さっきの事件を気に少し距離を取ろうと思いました。ですが距離を置きたいのに、気づけばずっとそいつを見てしまうんです。意識なんてしてないのに無意識にずっと。気づけば依存してるんですよ。嫌いになって距離を置いていたはずなのに、僕が必要を感じたときに、つけ込んできて弄ぶ。そんな奴が僕は大嫌いなんです。そして、実はそいつがこの教室内にいるんです。これから学校生活を送っていく。みなさんにも、そいつの恐ろしさを知ってほしい。だから今日はそいつの名前を公表しようと思います。」

ここまでの話を聞いたところで大勢の人が彼に注目していた。彼が言うすぐ依存させる奴を俺はどんな奴なのか気になっていた。だが名前を出してしまって本当にいいのかという心配もある。教室が彼の話に飲み込まれ、さっきまでバラバラだった空間がひとつになっている。

「そいつは、、、」彼は教室全体を見渡した。目を一人ひとり丁寧に合わせているように見える。目があった生徒は唾をごくりと呑んで、彼の発言を待っている。そしてついに彼は机に指を差し、名前を言い放った。

「『携帯』、ということで機械が苦手なので困ったことがあったら、教えてください。これからよろしくお願いします。」

俺は今日、彼と友達になろうと思った。そして、目の前のそいつとは距離を置くことにした。

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