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茶畑の里 花房さんちはみんな居候。  作者: ミラ
第七章 花房さんちの陽和くん

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帰還

 月のない夜、寒風の中の茶畑は真っ暗だ。けれど、小屋からは細い光が漏れていた。小屋の電気が点いている。

 私たちが明るい小屋へ踏み込むと、ストーブをつけて、一つの毛布に一緒に包まった陽和くんと凌くんとばっちり目が合った。私は一言目で声を張り上げた。

「夜に家を出るなんて、ダメ! 」

「は、花奈ちゃんごめんなさい……!」

「ご、ごめん……」

 私の剣幕に陽和くんは声を上げて泣き始め、凌くんはしゅんと肩を落とした。

「ちゃんと相談しなさい!」

 ダメの後の代替え案を忘れずに、私は腕組みして仁王立ちする。私の横をすり抜けて旬くんが二人を一緒に抱きしめた。

「ここにいて良かったー!心配したよもうー!」

 旬くんに抱きしめられた二人はやっぱり心細かったのか、旬くんに抱きついてしばらく動かなかった。これが、私と旬くんの役割分担だ。私たちが夫婦になったら飴と鞭がものすごくハマっていると思う。

 子どもたちが落ち着いてから、私は陽和くんの前に膝をついて屈んだ。陽和くんの右手を取って、彼の目を見上げる。

「クリスマスナンジャーが、願いを叶えてくれたよ」

「え?クリスマスナンジャーが?」

 陽和くんはそわそわしだしたが、凌くんは私の様子を見守っている。旬くんも陽和くんの書いた手紙は読んでいた。

 旬くんも私の隣で膝をついて陽和くんの左手を握る。私は旬くんと目配せしてから、陽和くんに訊ねた。

「陽和くん、良かったら……本物家族にならない?」

「オレ、花奈ちゃんと家族になれるん?」

 旬くんがにっと歯茎を見せて笑う。

「俺と花奈ちゃんと陽和の、三人で」

「え?!旬くんも?!」

「それって結婚するってこと?!」

 凌くんは頭の回転が速い。私と旬くんは顔を合わせてはにかんでしまう。凌くんは口をあんぐり開けてしまった。陽和くんが足をばたつかせる。

「どういうこと?!」

 旬くんが陽和くんに丁寧に説明する。

「俺と花奈ちゃんが結婚するから、陽和はその子どもになって、三人で本物家族になるのはどうってこと?」

「え?え!やった!オレ、しせつ行かんでええの?!」

「陽和が、俺と花奈ちゃんが良いって言ってくれたらだけど」

「良い!良い!本物家族になる!」

 陽和くんが両手を広げて私と旬くんの首に抱きつく。陽和くんが私たちをくっつけてぎゅうと抱きしめてくれた。三人で抱き合うと、なんだか──泣けてきた。

 凌くんは拍手して笑っている。

「……大人、やるじゃん」

 凌くんの大人ぶった評価に笑ってから、私たちは子どもたちを連れて、車に乗り込んだ。


 安心に満ちた帰りの道中で、私はふと気づいた。運転席の旬くんに話しかける。

「澄江さんが私たちに『手を出したらあかん』って言ったのは、もしかして私たちを試していたんじゃないでしょうか?」

「試し……行動ってこと?」

「他人であるならばこの線は出てはいけない。けれど本物の家族になる覚悟があるなら、踏み越えて見せろって感じで……」

 旬くんは前を向きながら、にへっと力なく笑った。

「澄江さんの試し行動は厳しいっていうか、ひとつもヒントくれないし、ただの試練だったよね」

 私がまさにそうだなと笑うと、後部座席の子どもたちはお互いに顔を見合わせて首をかしげていた。

 車が家に到着して、旬くんがエンジンを切るとルームランプが灯る。旬くんが振り返って子どもたちに言った。

「みんなーお茶の時間だよー」

 旬くんのいつもの呼びかけに、子どもたちは笑い、そろって返事をした。

「はーい!」

 彼らの明るい声がやっと、花房さんちに帰ってきた。

 


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