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茶畑の里 花房さんちはみんな居候。  作者: ミラ
第三章 花房さんちの凌くん

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プレゼント

 田沼さんが帰ったあと、いつものお茶の時間を迎えた。

トイレで席を外していた花奈が居間に戻ると、男衆三人が真剣に相談をしていた。座椅子に座る澄江さんが、目で彼らを示す。

「花奈、あれは見過ごしてええんか」

「あれって?」

 旬くんが心からの賞賛を凌くんに浴びせていた。

「すごい良い!俺は気持ち伝わると思う!」

「そう?僕もそう思うんだよね」

「オレもさんせー!」

「何の話?」

私が問うと凌くんが眼鏡を押し上げた。

聞けば、クラスメイトの女子に誕生日プレゼントを渡す計画を考え中だと言う。そういえば、授業参観に行ったとき、凌くんは隣の席の女子とすごく楽しそうに話していた。あの子だろうか。

 だがよく聞けば、男三人で相談した結果、凌くんが描いた「絵」をプレゼントしようと決まったらしい。私は即、口を開いた。

「だ、ダメですよ?!」

 男三人がそろって首を傾げる。澄江さんが大笑いした。

「私も花奈に賛成やで。歳食ってもこっちは女の意見や。絵はいらん」

 私は先日の凌くんとのケンカを経て、ひとつ対策を打つことにした。

ダメと言ったあとは一呼吸置いて、代替え案を示して意見を求める。こちらから一方通行のダメは止める。

これ以上の失態を避けるため、そして、私のダメが優しい音として響くように。

ダメを制御するためのマネジメントだ。

 私は一呼吸おいてから、言葉を繋ぐ。

「聞いてメンズたち。プレゼントは基本的に自分があげたいものではなくて、相手が欲しいものをあげてください」

 旬くんがそろりと口を挟む。この口を挟む余地を今まで私は与えなかった。

「相手の子も凌の描いた絵が欲しいかも……」

「旬くん」

 私は旬くんの前にずいと顔を寄せて熱弁する。

「凌くんの絵はいい味があります。それは事実です。けれど、中学生女子に理解されないかもしれないリスクを鑑みて、定番で重くない文房具やお菓子あたりを提案します」

 私はきょとんとする旬くんの前でまだ声を並べる。

「いや『花房さんちの凌くん』であれば川添茶の可愛い茶缶。もしくはお茶カフェへのお誘いなんかがオシャレかも?どう思いますか旬くん」

「は、はい……俺もそう思います」

 旬くんはすぐに折れた。もっと張り合ってくれてもいいのにと思っていると、凌くんと陽和くんは顔を合わせてから破裂したように笑い出した。

「花奈ちゃんすごいペラペラしゃべるなぁ!」

「理詰めがエグい」

「花奈は男を尻に敷くタイプやな」

澄江さんも堪えきれないように笑っていた。私はきちんと意見を求めただけだが、どうしてそんな評価になったのだろうか。凌くんが眼鏡を取って笑い過ぎて出た涙を拭いた。

「花奈ちゃんのダメ出しのおかげでよくわかった。僕、デートに誘ってみる。このへんは車ないとどこも行けないから送迎よろしくね、花奈ちゃん」

「それはいいけど、一番ハードル高いとこ行くね?!」

「だってデートしてみたいし。頑張らないと、何のためにお母さんやお父さんの誘い断ったかわかんないからね」

 湯呑を台所へ片づけてから、鼻歌まじりに部屋へ戻っていく凌くんの背を見て気づいてしまった。私は残りの湯呑を台所に運んだ。台所で湯呑を洗い始める旬くんの隣に立って、くいと顔を向ける。

「旬くん……もしかして凌くんって、好きな子と離れたくないから同居の話を断ったのでは?」

 旬くんがけろっと返答する。

「うん、そうでしょ。俺は最初からそう思ってたよ?」

「えー……」

「中学生男子だからそういうとこ可愛いよね」

 旬くんが大らかに受け取るので、さすが懐が広いと感心した。繊細でありながら、かつ大胆な凌くんの茶目っ気を知って、私は笑ってしまった。

しかし、果林さんはショックを受けそうなので、この件は黙っておくことにする。


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