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ピンクブロンドの父親

作者: 山田 勝

「いや~、分かっていたかって、そりゃー分かるよ」


 俺は貴族学園ではバカとして認識されていたよな。

 それでも学年7位だ。

 不思議に思わなかったか?


 まあ、そうだ。勉強の出来るバカっているが、俺は経験で分かるバカだ。


 体験して分かったのだ。


 俺の家は武門系の血筋だ。時々、領地の騎士団の兄貴達と一緒に魔獣退治や、治安維持に当たっていた。

 だから、貴族学園に入学しても平民の特待生と仲良くしようとしていたのさ。



「え、『そこでリディアと知り合ったのね』って、まあ、その通りだ」


 話を戻すとな。軍隊には下級市民が多くいる。

 皆、お腹を減らして食べるために入隊しているのだ。

 王国の威厳を守るためとか宣誓をするが、そうじゃない。


 だから、下級兵士と接していると、国の状態がわかるのさ。


 だから、俺は一生懸命に学園で訴えた。


 平民をイジメるな。悪しき差別をするなって。


「リディアが令嬢たちに総スカンを食らっていたよ。持ち物を捨てられるくらいには」



 それが、何でか『婚約破棄』になっちまう。

 不思議だな。


 君たち高位貴族は自分の頭の中に答えが全てあるものと思っている。

 まるで、60歳の頑固職人のようだ。


 まあ、君はその後、王太子殿下の政策研究会に入ったのだよな。



「じゃ、じゃ、どうすれば良かったのよ!」


 ここで、初めて、俺の元婚約者クラウディアは感情をあらわにした。


「いくらでもあったよ。視察や炊き出し、チャリティーでお金を集めて」


「だから、そんなことをしても偽善・・・」



 黙ったか。彼女は失敗したからだ。

 彼女は優秀だ。ただし、お金集めのな。



 税金を集め。貴族たちは豊かになり。国中に怨嗟の声が広がった。

 金貨数百枚(数千万円)の船旅に興じる貴族の横で、一斤大銅貨3枚(三千円)まで値上がったパンを買えなくて歯ぎしりしている庶民達がいた。



 王太子の政策研究会では、貴族や商会が豊かになれば、民も潤うが基本の考え方だ。

 俺は真っ向から異を唱えていた。



「どのような政体や指導者でも問題はある。だからこそ、偽善と言われてもチャリティーや慈善事業で民と接し、庶民感覚とすりあわせをしなければならない」



「グスン、グスン、私はどうなるのよ」


「さあ、近衛騎士団を捨て駒にして逃げたのは良かった。しかし、ドレス室を守らせたのだって?

 そりゃ、最後の忠誠心もなくなるわ」



「貴方と・・結婚するわ。旧王朝の王妃よ!それで、旧勢力と革命勢力の和平の象徴になるわ」



「それこそ、こちらは何度も和平を訴えたよ。それに、俺はリディアと結婚している。娘だっている」

「別れなさい!貴方には王家の血が入っているのよ!」


「やだね。王家の血なんて海に砂糖を一さじ入れたぐらいの薄さだ。それこそお前らが言っていた真実の愛だ。別れないね」


「じゃあ、貴方が王にならないのなら誰が王になるのよー」



「それは、もう、クラウディアの心配することではない。適正な裁判を受けさせることは約束する。もう、いい。連れて行け」


「畏まりました」


「グスン、グスン」


「最期に会話をさせてくれた看守の諸官、感謝する」


「もったいないお言葉です。エリオス参謀長!」



 フウ、この国では商業都市連合の大商会長の合議制や、異世界の民主主義というものはまだ早い。


 だから、適当な王族を探した。似非王族がごまんといる。



 しかし、辺境にいた。珍しく育ちの良さを感じさせる王族、姫だ。

 何でもメイドに連れられて、王太子の粛正から逃げてきた第2王子の娘。


 最後、国があれて王族同士でも争いが起きた。

 王太子の弟も中々腹黒かったが、娘はまともだ。


 そうか、使用人なら主人として育てる・・か?

 理想の主人を育てようとしたのだな。



 名前は、アスラーテか。金髪碧眼で問題なし。王族の容姿だ。



 そろそろ家に帰るか。


「ただいま」


「ちょっと、お父様!湯浴みの準備をしたからね。入ってからご飯を食べるのだからねっ」


「あ、すまない。徹夜続きで湯浴みしていないな。臭いか?」


「そうじゃないのだからねっ!かっこよい男が台無しだからね!お母さんのためだからね!」


 ほお、男心をくすぐるのは母親譲りか。


「貴方、お帰りなさい」

「だだいま。リディア、俺さ。宰相になりそうだわ」

「まあ、大変だわ。私、社交全然だめだわ」


「大丈夫だ。社交は・・・サリーに任せようか?まだ、10歳だから令嬢教育、間に合うかもしれない」


「「えー、お貴族様になるのー」」

 二人は横一列に並び驚いた。ピカッとピンク色が目を襲う。


「令嬢教育はサリーのやる気次第だ。このまま平民の教育でもいいが、きちんと考えておいてくれ」



 二人並ぶとピンクブロンドが眩しいとは言わないでおこう。


 それが、ピンクブロンドの父親の最低限の資格だ。



最後までお読み頂き有難うございました。

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