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1章9話 声優が呼ばれた意味

 フレアサークル。

 “陽炎の騎士”ガヴェインが持つその技はカウンター技ではない。

 その技の本質は回復技である。

 自らの技で周囲に燃え広がる炎を吸収し、自らの剣に集約させる。

 そうすることによって、ガス欠になった際に再度技を打つことができるようになる。


ーーーーー

 “色欲の使徒”ラストは炎に飲まれる勇者を見て勝ちを確信していた。

 騎士団長フォルタすら葬った技。

 その技の火力を更に高めたこの技を前に、未だ覚醒していない勇者に生き残る術はないと。

 だが彼女は目撃する。

 弱者の覚醒を。

 英雄の帰還を。


 炎が収束してゆく。

 徐々に勢いの弱まってゆく火柱から二つの人影が見える。

 1人は先ほど確実に葬ったと思った勇者。彼は腕を前に突き出し、目を瞑っている。

 そしてもう1人はーー


ーーーーー

 カズキは目を開ける。

 「成功…した?」

 正直に言うと賭けであった。

 どこかあった恥ずかしさをかなぐり捨て、全身全霊の真剣に自分ならできると信じ発動を試みた技。

 本来なら炎剣ガラティンが握られているはずの右手に、自分の周囲の炎を収束させるイメージを持って念じたその技。

 だが自らの右手には炎は宿っていない。

 では何が…?困惑するカズキに突然後ろから声がかけられる。

 

 「よくやった、召喚士君。」

 一瞬フォルタ団長かと思ったが声が違った。

 それどころかこの声は自分にとってよく馴染みのある声でーー

 振り返るカズキの目に映る人物。

 銀色の甲冑。赤い髪。頬の傷。そしてその手に持つ炎を纏い輝く剣。

 その人物は“陽炎の騎士”ガヴェインその人であった。


 「ガヴェイン…なのか?」

 「ああ!ずっと君の中から見ていたよ。死を前にした君が、心の底から僕の力を使おうとしてくれたおかげで顕現できたようだ。」

 力が抜ける。

 「おそらく僕ではなく君が呼ばれたのは、僕が架空の人物であることが影響しているのだろう。君を通して召喚することで、裏技を実現したというところだろうか。」

 英雄本人ではなく自分が召喚された意味。

 その意味があったと知り安堵と共に力が抜ける。

 「勿論それだけが理由という訳では…おっと、大丈夫かい?」

 倒れそうになった身体をガヴェインに支えられる。

 安心感からか自分の声に心配されるのって少し新鮮だな…なんて考えも湧いてくる。

 「もう少しだけ踏ん張ってくれるかい?君が気絶してしまうと僕の顕現がどうなってしまうかわからないからね。」

 俺は頷く。

 ガヴェインは笑みを浮かべ、ラストの方を向く。

 勿論俺を背にして、だ。

 「お待たせしたね、使徒。不意を打たないなんて誠実なんだな?」

 「隙なんてなかったくせによくいうわぁ。」

 緊張。

 ラストは先ほどの炎を喰らい尽くし爛々と輝く炎剣ガラティンを警戒。

 ガヴェインはカズキが巻き込まれないように警戒する。

 時が止まったように長く睨み合う2人。

 

 だが決着の時は突然訪れる。

 突如ラストの背後の建物が倒壊。それと同時にラストに黒い影が迫る。

 その黒い影は体のほとんどが焼け落ちた人物。

 両腕はすでに機能していないながらも、口で大剣を噛みラストに迫らんとする。

 剣や焼け残った装備品から、フォルタ団長だとわかる。

 完全なる不意打ち。

 だが…


 「視えて、いるわよぉ!!!」

 背後に振り返ったラストが炎の渦をフォルタ団長に放つ。

 フォルタ団長は再び炎の渦に飲まれる。

 しかし背後を振り返り、隙を見せたラストをガヴェィンは見逃さない。

 輝く炎剣をなぎ、月のように弧を描く炎の斬撃を放つ。

 だがラストはこちらにも対応する。

 「残!念!ねぇ!!」

 両腕を前にだし炎の渦を放つ。

 炎の渦と炎の斬撃が拮抗する。

 そしてーー

 炎の渦と炎の斬撃は対消滅する。

 

 ラストは笑みを浮かべる。

 吸収した自らの大技を放出したと思われる超火力の斬撃。

 これを凌げば勝利は確実であると。

 だがーー

 

 次の瞬間、ラストの身体に衝撃が走る。

 血を吐きながら、ラストは自分の身体を輝く剣が貫いていることに気付いた。

 

 「残念だったね。目眩しだ。」

 「カハッ」

 よく見るとガヴェインの身体も、至る所が焼けこげている。

 自分の視界が炎しか見えなくなっている間に、炎の渦を通って接近していたのだ。

 再びの吐血。剣を引き抜こうと身体を動かすも、逃げられない。

 「それに君の大技はさっきのではまだ解放しきれていない。」

 それはつまり…

 「まちなsーー」

 「全開放!エクスガラディーン!!!」

 一閃。

 剣から上空へ向けて煌めく熱線が放たれる。

 ラストの身体はその熱線と共に打ち上げられる。

 そして熱線は、はるか空の彼方で轟音と共に炸裂する。

 その様はまるで太陽のようであった。

 

 そんな必殺技を放つガヴェインの背を見ながら、カズキの意識は闇に沈んだ。

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