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1章6話 裁定者

 「失礼する。」

 レストランで鶏肉料理をご馳走になり、デザートを待っている最中。

 突然個室内にフォルタ程ではないが長身の男が入ってくる。

 薄い紫色の長髪で、スーツをきっちり着こなしている。

 

 「ここに勇者がいると聞いて来たのだが…君だな。」

 真っ直ぐホムラ・カズキをみて彼は言う。

 「僕はただのロウジェから来た旅人ですよ。貴方は誰でしょうか?」

 勇者と言われたことに動揺しつつも、設定で押し通す。

 「ハハァ。召喚者サマァ、そいつァ悪手だ。この世界でこいつの顔を知らない奴はほとんどいねェ。つか、そもそも嘘が通じねェ。」

 「勇者様、この方は…」

 リリが説明しようとしたのを手で遮り、男は口を開く。

 「私の名前はユスティア。審判所の長官を務めている。裁定者と呼ばれることもあるがね。」

 「嘘が通じない…とは?」

 「簡単なことだ。私は嘘を見抜く能力を持つ。この能力を用いて、私は私は善悪の判断をしている。」

 「かつては中立機関として教会が善悪の判断をしていたのですが…90年前に当時の大司教が4国を相手に戦争を起こしまして、宗教団体に権力を与えるのは危険と判断されました。その代わり純粋に審判を行うだけの機関として審判所が成り立ったのです。」

 リリが説明をしてくれる。

 「冒険者協会が代わりになる案もあったそうだが、当時の長が傲慢にもその権利を蹴ったため私に白羽の矢が立ったのだ。私が長命種だったことも理由だろうが。」

 「冒険者協会が代わりになる案があったのか。まァ結果だけ見りゃあんたに収まって良かったと思うぜ。」

 「君はそもそも生まれていないだろう。知らなくて当然だ。」

 「ハハァ。」

 色々能力のこととか気になることではあるが、まずは彼が何をしにきたのか聞かなくては。

 「それで、あなたは何をしにここにきたんですか?」

 少し警戒しながら問う。

 「ただ君の様子を見にきただけだ。特に何をするわけでもない。警戒されているようだしすぐに帰ろう。」

 ユスティアはそう言い残し部屋を出ようとする。

 しかし部屋から出る直前。振り返らずにユスティアは口を開く。

 「勇者よ。把握仕切れていないことも多く混乱しているだろう。対価は頂くが、私が必ず力になろう。神に誓って、などは言わないが、必ず。では失礼する。」

 そう言ってユスティアは今度こそ部屋を出る。

 ユスティアの足音が聞こえなくなり、静まり返る室内。

 悪い人ではないのだろうか…ただ本心が全くわからなかった。

 「まァ、力になってくれるってなら別に深く考えず、ありがたがっときゃいんじゃねェか?部屋の外でデザート持ってる嬢ちゃんも居た堪れなそうだし、考えるの早めにしてとっととデザート食おうぜ。」

 フォルタが口にする。よく見ると部屋の外にデザートを持った店員さんがいた。

 部屋には防音魔法がかけられているので彼女に何か聞こえたわけではないだろうが、入りにくい空気感は伝わってしまったのだろう

 「それもそうですね。頂きましょう。」

 力になってくれると言うのならその言葉を一旦信じることにしよう。

 そして3人は少し溶けたシャーベットを頂くのだった。


ーーーーーー

 店を出て次は冒険者教会に向かった。

 横に騎士団長がいるからだろうか、人相の悪い冒険者から洗礼を受けると言ったこともなく淡々と説明を受けた。

 

 ・冒険者教会のランクは6段階

  D、C、B、A、S、SSランクまで存在する。

  基本的に一般人がなれる限界と言われているのがSランクで、SSランクは単独で難易度Sのダンジョンを踏破できることが条件となるらしい。

  SSランクは今は2人しかいない。


 「SSランクのお一人はアイラ様という女性の冒険者なのですよ!雷を纏う双剣を持った美しい女性で、全女性の憧れなのです!」

 「もォ1人はキングって野郎だ。性格に難ありだが実力は確かだぞ。確か大剣を使ってるんだったかァ?」

 騎士団長も認めるほどの実力者らしい、と言ってもまだ騎士団長の力を見てないからイメージしにくいけど…

 「あァ〜、お前俺の実力を疑ったな?いいぜェ、本当ならこの後街の近くの魔物討伐の予定だったが危険区域まで行ってやろうじゃねぇか。」

 え!?それは遠慮したい…今の俺まだなんの力もないし…

 「それは危険ですよ!フォルタ団長様!流石に見過ごせません!」

 リリは怒ってくれている。だが…

 「この国の最高戦力の力を見せておくってのも大事だと思うぜ。絶対に召喚者サマを戦わせないと約束するし、何かあっても命をかけて絶対に守ってやる。だからこれは決定だ。嬢ちゃんは危険だから一旦王城に帰りな。」

 リリは抗議し続けてくれている。

 しかし、この手のタイプは転生前から知っているが絶対に折れない。

 俺は危険区域に行くことが決定してしまったのだった。

 

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