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1章5話 転生特典は…

 結論から言おう。転生特典は無さそうだった。

 

ーーーーーー

 昨夜のこと。

 食事に舌鼓を打った後、部屋の周囲に人がいないことを確認した後、自分の実力の確認をする。

 「ステータスオープン。メニューオープン。アナライズ。解析鑑定…」

 結果何も出ない。

 それならばとガヴェインの魔法を試す。

 「炎剣・顕現。エクスガラディーン。フレアサークル。オーバープロミネンス…」

ーーーーーー

 思い当たる呪文を全て試すも何も発現しなかった。

 諦めて寝たがこれは非常にマズイ。

 魔王を封印するための勇者が無能だったと知られたらどんな扱いを受けるかわからない。

 何としても何か力を身につけなければ…この世界の魔法なら使える可能性もあるか?

 今日は街の視察だし明日魔法の研究施設に連れて行ってもらうか、教育機関の視察を予定に入れてもらおう。

 そんなことを考えながら俺は今、馬車に乗り騎士団と共に街の視察に向かっている。


 「ど〜したァ召喚者サマァ?浮かねぇ顔してんな?」

 隣に座る壮年の男性が言う。

 彼の名前はフォルタ。ブレーウェ騎士団長である。

 銀色の短髪と身長約2mの長身が特徴で"銀熊"という異名もあるという。

 どこか気怠げな表情や佇まいとは裏腹に、かなりの実力者なのであるという。

 「そりゃ緊張もしますよ。僕にとっては未知の世界なんですから。」

 「ハハァ。俺にはわからん感情だなァ。何事も勇気を抱きながら行動すりゃ恐るものなんてねぇと思うがねェ。」

 「そういうもんですかね…」

 「そういうモンだ。勇気を抱いて進み続けろ、若人よォ。」

 見た目の割に熱血思想というか…勇敢な人なんだな。

 それが騎士団長まで上り詰める秘訣ってところか。

 「僕も頑張ります。ところで今日の予定って…」

 「ここからは私が説明します!」

 ピョコっと生えるようにリリが背筋を伸ばし挙手する。

 「午前中はこのまま城下町の視察をして頂きます。今日は冒険者の多い地区の視察となります。周辺のレストランで昼食を食べた後、冒険者協会へ視察。実際に街の外に出て魔物討伐を見学です。」

 「冒険者協会は荒くれ者も多いから気ィつけなァ。っとォ、そんな話してるうちに着いぞ。」

 馬車が止まる。目的地に着いたのだ。

 「出発前にもお話しさせて頂きましたが、再度説明させて頂きます。まだ勇者様が召喚されたことは市民に明かされていません。なので今日は勇者であることは伏せて下さい。外では私たちはホムラ様とお呼びさせて頂きます。」

 真面目な顔をしたリリが言う。

 確か他所の貴族って設定だったな…確か場所は…

 「ロウジェ貴族の坊ちゃんって設定だ。俺が護衛につくのも違和感ないだろうよ。」

 思い出せずにいる様子を見てフォルタ団長がすかさずフォローする。

 「了解。そもそも視察に連れてってもらってるのも俺のワガママだし、あんまり余計なことは喋らない様にするよ。」

 「まァバレたら俺が謝ればいいさ。それよりそろそろ行くぞ。」

 そう言ってフォルタ団長が馬車を先に降りる。

 その後に続くリリを追って、カズキは馬車を降りる。

 その目に映るのは統一感のある色彩の建物が並ぶ街だった。

 道は石畳で舗装されており、例えるなら中世ヨーロッパの様な風景だろうか。

 今いる場所は中央に噴水のある広場で、この広場を中心に四方に道が伸びている。

 「ここは西広場です。今いる西地区は宿場町や冒険者協会等があり栄えています。北地区は王城や貴族街があり、東地区と中央地区は様々な商店が集っていて、南地区は主に地元の方が使う食事処やお店が多い地区になります。ここから西に進むとある門を出ると城下町の外に出ることができます。西地区から東地区にかけての大通りがこの城下町のメインストリートになります!」

 よく見ると確かに、四方に伸びている道のうち人通りが多いのは東西へ伸びている道だ。

 西へ向かうのは動きやすそうな服の人や大きな武器を持った人が多く、東へ向かう人はおしゃれな服の人が多い。

 冒険者と一般市民の差というところだろう。

 「獣人も結構いるんだ。」

 街ゆく人の中に獣人をみかけ呟く。獣人といっても耳だけ生えている人や顔まで完全に獣になっており全身体毛に覆われてそうな人もいる。

 獣の種類も人それぞれなようで狼系や猫系、首の長いキリン系獣人もいるようだ。

 「ええ。ヴェルト連邦との友好が盛んになって以来。多くの獣人が移住しています。その結果ハーフも生まれており、基本的にその血の濃さによって見た目が変わります。」

 「獣人の血が濃いほど身体能力が高く、魔力の扱いが苦手になりやすい。まァあくまで傾向だから人それぞれだがなァ。」

 「騎士団にも獣人の方いらっしゃいますよね?」

 「あァ。なんならオウランの野郎もハーフだぞ。」

 「オウラン?」

 初めて聞く名前に首を傾げる。

 「騎士団の副団長様ですよ!ホムラ様!」

 「トップが2人もいなくなったら仕事が回らないから今回は置いてきてるがなァ。」

 どうやら獣人でも差別の対象だったりはしないようだ。

 今所属している場所にそういった闇がなくてひとまず安心と行ったところだ。

 「いつまでも突っ立ってないでそろそろ飯行くぞォ。」

 正直初めてみるファンタジーの世界にまだまだ興味はそそられるが、ひとまず空腹を満たすためにレストランへ向かうのだった。

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