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1章4話 魔王と勇者

 200年前、4国家の中央に位置する大海に黒い大地が出現した。

 まるで海が剥がれる様に現れたその大地には、各国から調査団が派遣された。

 黒き大地には炎で形成された葉をもつ植物や雷を纏う鉱石、水でできた生物、謎の建造物など未知に溢れていたという。

 新たな生態系を前に調査隊は心躍るが、世界の発展を夢見る時間は長くは続かなかった。

 奥地へと歩みを進めてゆく調査隊の前に、どこからともなく黒い影が現れる。

 その影は確かな輪郭は持たず揺らめいており、表情は黒く塗りつぶされたように何も見えない。

 人族・魔人族とも異なる様子の影を相手にベテラン調査員を中心に緊張が走る。

 そんな中、浅慮な1人の調査隊が声をかけ近づく。

 彼はまだ若く、最近調査隊に配属されたばかりであった。若さ故に未知との遭遇を前に警戒よりも好奇心が優ったのだろう。

 その人懐っこさは彼の長所であったが、今回に至っては最悪の事態を引き起こす。

 「初めまして!僕はこの大陸の外からきtーーー」

 それが彼の最期の言葉となった。

 黒き影の足元から伸びる槍状の影に頭を貫かれ彼は息絶えた。

 そこからパニックに陥った調査隊が壊滅するまで時間がかからなかった。


 「このように、第一回の調査は失敗しました。今回の事態を映写魔法によって把握していた把握していた各国は、この後戦力を増強し3度調査隊が派遣します。しかし、どれも失敗に終わってしまうのです。」

 茶髪の少女、リリから説明を受ける。

 「かなりの戦力差があったわけか…」

 「はい。黒き大地は魔力を乱す性質があるらしく、こちらの魔法や魔力兵器に悪影響が出てしまっていたと聞いています。例の映写魔法もかなり質が下がっていたそうです。」

 「どうしようもないんじゃ…」

 「ええ、それについては少し明るい話があるんですよ!それはですね…。」


 ーーーーーー

 リリから聞いた話をまとめると、以下の様なことがあった様だ。


  ・黒き大地が確認されて数十年後、各国でも黒き大地で確認された動物が現れるようになる。また、地面が裂け中から洞窟や謎の建造物が出現することもあった。

  ・その動物を“魔物”、洞窟や謎の建造物を“ダンジョン“、黒き大陸の謎の影を"魔王"と呼称する。

  ・ダンジョンから採取される素材や魔物の素材はこれまで未確認の性質を持ち、黒き大地で確認されたものと同質であると推測される。

  ・素材を集めるために冒険者協会が設立される。得られた素材は工房や研究機関に回され、黒き大地に適応できる武器・防具・魔法道具の開発が行われる。

  ・この時期に4国が魔王に対抗するするために協力し合うようになる。


 「そして技術の進歩がすすみ、遂に120年前勇者召喚の技術が成立します。その10年後に先代の勇者様が召喚されるのですよ!」

 っっっっっ!?俺の前にも勇者が召喚されていたのか!?

 衝撃の事実だが俺が今回呼ばれたということは、先代勇者は失敗したのか…?

 そんな俺の不安を読み取ってかリリが口を開く。

 「先代の勇者様は無事魔王を封印しました。そして元の世界に還られたと聞いていますので安心してくださいっ!ただ、魔王の力は強大で封印が緩やかに解け始めていて…それで勇者様が再び呼ばれたのです。」

 なるほど、先代は無事やり遂げたが封印が解け始めているわけか…

 だとしたら勇者が再召喚された理由は納得できるな…なぜ俺が呼ばれたのかは疑問だが…

 それよりも…

 「勇者が元の世界に帰ったて本当?」

 「ええ。勇者様のお仲間方がそう証言されたと記録に残っていますよ。」

 リリの様子は嘘で俺を安心させようとしているようには見えない。

 おそらく記録として残っているのは事実なのだろう。

 実際どうだったのか気になるが、そもそも俺は刺されてるんだよなあ。

 正直未練はあるけど、現実世界の俺は死んだと思ってこの世界で新たな生を謳歌した方が精神上いいな。

 となるとこの世界での立場をよくするためにも、勇者の仕事は受けるのが現実的だな。

 「よくわかったよ。ありがとうリリ。」

 「いえいえ、勇者様。詳しい事情は改めて王族の方々からお話があると思いますが、だいたいこんな感じです!まだ突然で混乱されていると思いますので、今日はここまでにして明日は街の視察へ向かいましょう!もちろん、騎士団の護衛は着くはずです!」

 そう言ってリリは立ち上がる。

 ふと窓の外を見ると既に日が落ちていた。色々あって時間の感覚がなくなっていたな。

 ーーグゥ〜〜〜〜〜ッ

 気が抜けたのかお腹がなる。そういえばまだ何も食べていなかったな。

 「ふふっ。まだお一人の方が気が楽だと思いますので、後ほどこちらの部屋にお食事をお持ちしますね。」

 笑いながらリリが言う。

 少し恥ずかしさを感じながらも、俺を休ませようという心遣いに感謝する。

 「ありがとうリリ。楽しみにしているよ。」

 笑顔を浮かべ、リリは退室する。

 さて、今日は刺されたり召喚されたり色々あったがまずは食事を楽しもう。

 その後は、今の自分の実力のチェックだな。

 異世界転生モノには転生特典がセットなこと多いし、俺の場合もそうだと信じたい。

 「というか何もなかったら魔王討伐なんてできる気がしないぞ…」

 やっぱり不安になってきたな…

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