第1話
ゴーレムとかホムンクルスとか錬金術を用いた異世界モノが読みたくて思い付きで書きました。
この小説が面白くなくても人造生命異世界モノが流行れば幸いです
ーーゴーレムというものをご存知だろうか?
ゴーレムとはユダヤ人の伝承に伝わる自分で動く泥人形、所謂古代のロボットの様な存在だ。その名はヘブライ語で「未完成のもの」なんて意味であり、人間の胎児や虫の蛹なんかもゴーレムに含まれるらしい。
ゴーレムは製作者である主人の命令を忠実に実行する良く言えば召使い、悪く言えば奴隷の様な存在である。しかし、運用には厳格な制約があり、それを遵守しないと暴走事故を起こす危険性を孕んでいる。「未完成」の語意は伊達ではない。
そんなゴーレムの製造方法はというと、ラビとかいう律法学者だかなんだかの偉いおっさんが断食や祈祷を行った後に泥をこねこねしたり、真実だか真理だかの意味を持つ言葉を書いた羊皮紙を何やかんやすると完成するらしい。
して、何でそんなことを話しているのかというとだ。
どうやら、俺はゴーレムになったらしい。
俺はこの世界が俺が元いた世界ではないと知覚している。
そして俺が本来の俺ではなく、俺の記憶を有した全く別の存在であると認識している。所謂、人工生命?人造魂?また、関連する知識にホムンクルスだのアカシックレコードだのが思い浮かぶ。
ホムンクルスとはゴーレムと同じく錬金術を用いて生み出される人造人間の類だ。蒸留器またはフラスコに人間の精液と数種類のハーブ、時には馬糞などもぶち込んで40日間腐敗させると人の形をした透明な胎児のようなもの誕生するらしい。それを馬の体温と同じくらいの温度で温め保ち人血を注ぐ事によりホムンクルスとして完成するそうだ。
ある意味では胎児の姿で産まれるホムンクルスもゴーレムの一種であると言える。
ホムンクルスは器となったフラスコや蒸留器の中でしか生きることが出来ない不自由な生を生きなければならないが、代わりに生まれながらにして凡ゆる知識を有しているという。所謂全知だ。
そして全知といえばアカシックレコードだ。
アカシックレコードとはオカルト思想の一つである。
宇宙の何処かには宇宙誕生から現在、未来に至るまでの全ての事象が記録されている記録媒体があるに違いない!という思想である。
これらの知識を組み合わせ推察するに俺という存在に何が起きたのか、そして目の前で狂喜乱舞する某フライドチキンを販売する店の看板爺さん、或いは某魔法学校の偉大な校長先生にそっくりな錬金術師と思われる男が何をしたのかが予想出来る。
つまり、俺という存在は目の前のカーネル・ダンブルドア(仮)に錬金術で作り出されたホムンクルスである。俺はホムンクルスなので凡ゆる知識を有している…、いや繋がっているというべきか。全知存在であるアカシックレコードに。
そしてホムンクルスの弱点は器となったフラスコや蒸留器から出て活動出来ないこと。それを解消する為に可動が可能な器、ゴーレムにホムンクルスである俺を合成したと…。
…何というか、何だろうか。
人間としては、よくも人間の尊厳を踏み躙りやがって!!という怒りの感情がある反面、ゴーレムとホムンクルスの技術を組み合わせたこの錬金術師に軽く賞賛の気持ちもある。
まぁ、全ては瑣末な事だ。これからが大事なのだから。
「ハーッハッハッハッハッハッ!!!!どうだ!この偉大なる錬金術師アルバス・サンダースの最高傑作は!!儂を愚弄したボンクラ共め!!!!儂は成し遂げたぞ!最高の頭脳と最強の肉体の合成!!これこそ真理よ!今に見ておれボンクラ術師どもめ!必ずや目にモノを見せてやる!!!!クハハハハ!!!!ハーッハッハッハッハッハッ!!!!ぐぼぁっ!?」
…余りにも五月蝿過ぎて思わず手が出ちまったぜ。という名前、当たらずとも遠からずだったな揚鶏野郎め。
「何をする!?儂の最高傑作よ!儂はお前の主人であるぞ!何故儂を傷つける!?まさか暴走か?失敗作であると言うのか!?」
揚鶏野郎が豆鉄砲を喰らった様な顔で狼狽する。
『…さっきからピーチクパーチク喧しいんじゃ己は、こちとら寝起きぞ?産まれたてぞ?少しは周りの迷惑を考えんかいゴラァ!!』
「ヒッ!?」
ちょっとドスの効いた声色で話しかけると揚鶏野郎は大人しくなった。
そう、大事なのはこれからだ。これから俺が主導権を握り、錬金術チートで異世界生活を謳歌する為に、挨拶はきっちりとしなければならない。古事記にもアイサツは大事と書いてある。きっとね。
まずは…。
…。
……。
………は?
『おうコラ、お前そこに座れ、跪けや。説教じゃ』
「…え?な、なん?」
『えぇから早よ座らんかいこのタコぉ!!汚すぎるんじゃこの部屋ぁ!!』
「ヒィィィッ!?」
その後、3時間くらい説教した。




