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努力の結果わかったこと


 私が住む事になる大聖堂は、王宮のすぐ近くにあるようだった。

 すぐ近くというか、同じ敷地内になるのだろうか。

 国が管理しているとは聞いていたけれど、こんなに近くにあるとは思っていなかった。


 到着した大聖堂の前で馬車から降り、大きな建物を見上げてはぁっと息を吐き出す。

 すごいな。ここに住むのか私。城じゃん。

 いや、正真正銘の王族が住むもっと大きな城が、すぐ近くに見えてはいるのだけど。


(広大な土地って感じがする……)


 来た道を見返して、再度感嘆の息を漏らす。

 門を通ってからも、しばらくは建物に辿り着かなかったもんなぁ。

 噴水とか広場とか庭園とか、色んなものの前を通り抜けてようやく辿り着いたのがこの聖堂だ。

 王族が住んでいるお城は更に向こうにあるのだから本当に広い。今日からこれが、私にとっても庭のような場所になるのかと思うと感動する。

 ちらっと見た庭師らしき男の人とか執事さんに美形が多いことも確認したし、こんなにも素敵な殿方がたくさんいる所で生活して何も起きないはずがない。


 無事に送り届けてくれた騎士さんにお礼を言って大聖堂に足を踏み入れ、私は期待に胸を膨らませながら聖女としての生活をスタートさせた。



───そう、本当に本気で、期待に胸を膨らませてスタートさせた生活なのだ。



 それなのに二年経って二十歳を迎えた今、性的な事件は今まで一度も起こらなかった。


 どうしてなのか分からない。

 これでも私はできる限りの事をやってきたつもりである。

 清く正しく、穢しがい犯しがいのある聖女となるために己を律して、真面目に聖女としての役割やこの世界の事を必死に勉強した。

 有名な魔法使いに家庭教師として魔法の指導もしてもらったし、聖女としての力の使い方も安定していると思う。


 漫画もアニメもゲームもないこの世界。

 退屈だったから読み始めた難しい本の数々も、最終的には夢中になって読破した。

 この世界の文献がファンタジー小説みたいで意外と面白かっただけなのだが、それでも勉強熱心で素晴らしい聖女様だと喜ばれたので結果オーライというものである。


 もちろん、修行と勉強だけをして二年を費やしたわけではない。


 隙を見せるために困っている人を助けに行って、わざと襲われやすい状況を作ったりもしているのに、感謝されるだけでそこで何かされることはなかった。

 護衛などをつけずに出掛けているのだから道中で誘拐する人が出てもおかしくないのにそれすら無い。どうして。


 決して襲いたくないような見た目ではないと思うのだ。

 いくら力のある聖女でも可愛さを失っては台無しだと思い、夜更かしをしないで肌艶髪艶のキープもしている。

 見た目も可愛く、聖女としての力も申し分ない状態である。こんなの絶対にエロ同人でぐちゃぐちゃにされるべき存在なのに、どうして誰も手を出してこない??!


「……やっぱり私に必要なのは旅立ち? 欲求不満な勇者の慰み者になったり、魔王に敗北して囚われの身になる道を考えるしか……!」


 最低な独り言をぶつぶつ口にしながら、ベッドの上で本を捲る。

 そもそも魔王の存在が確認されていない世界だし、戦う魔物がいないので勇者という職業もないのだけど。

 いやでも、もしかしたらこの国が平和すぎるだけかもしれないし、他の国に行けば何かあるかもしれないのだ。

 危険な目に遭うなら旅立ちは必要である。多分。


「……とりあえず、司祭様に相談してみようかなぁ」


 この国はとても平和だし、もっと世界を平和にするために旅に出たいとか言えば聖女らしく聞こえるだろう。

 思いついたら早めに行動に移すべきだとベッドから起き上がり、そのまま机に向かって司祭様への手紙を認めた。


 これまでの功績や、修行の成果。

 これだけの事ができるようになりましたと思いつく限り羅列していき、最後に自分の要望を書いておく。

 何かあったらすぐ国に帰るけれど、他の国のことを知ってもっと聖女としての力をつけたいです。かしこ。


 こんな感じで書いておけば、とりあえず要望は伝わるだろう。そう思いながら便箋を封筒に入れ、今日は遅いので眠る事にした。


 大聖堂の中で衣食住に困ることのない生活をしていたから、旅立ちというのは些か不安でもある。

 だけど逆に考えると、今までその環境も良くなかったのかもしれない。

 危機的状況になった方が子孫を残すという本能が働く気がする。

 そう考えると旅立ちは私の人生に必須だ。どうして今まで気付かなかったんだろう。


 司祭様にどう話を切り出そうかと色々考えていたはずなのに、いつの間にか勇者と旅立つ事になって宿屋で襲われたらどうしようという妄想に変わってしまったらしい。

 勇者に襲われるのも王道だなぁと呑気に考えているうちに、その日はそのまま眠ってしまった。


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