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魔女っ子ぎゃんぐすたー!  作者: やよいつや
7/7

Epsode7 希望の灯火(下)

武家のお嬢様として生まれたツクシは、幼少期からたくさんの愛を注がれて育った。「笑顔が綺麗だね」と言われて育ったそんな彼女の夢は、他人を笑顔にすること。そのため、ツクシは常にアイドルになろうと頑張っていた。しかしアイドルとしての彼女の人生は、そう順風満帆なものではない。「裏社会の魔女がアイドルになれるわけない」と負のレッテルを貼られた彼女と妹。しかし、「私が笑顔にならないとみんなを笑顔にすることはできない」と信じた彼女は、いつも笑顔だった。そして、15歳のとき、彼女はクロダ・アジサイに出会った。「完璧なパフォーマンスと完璧な魔法で、自分の美しさをファンたちに認めさせる」。真逆の存在だが、ツクシは彼女のパフォーマンスに惹かれた。しかし、アジサイはツクシのことをないがしろにしていた。相手に自分のことを認めさせたいと思ったツクシは、あるとき相手のライブに乱入し自分の魔法をパフォーマンスとしてぶつけた。そしてそれが評判になり、二人は良きライバルとなったのだ……


と、ツクシは思っている。きっと、アジサイたちにも言えない事情があるのだ。もしくしたら、嫌なことがあったのかもしれない……ならば、私ができることは。どんなに無様な姿を見せようが、この笑顔さえあれば、私はアイドルのままでいれる。彼女に笑顔を与えたい――


「さあ、行くよ!私のステージはここから!」


杖を一振り――虹色の光に包まれたツクシが、空に舞い上がる!


「まだこんな体力が――」


「ミラクル・シャイン!!」


カッ!!とツクシの杖がまばゆい光を放つ。


「うっ!!めくらましかよ――」


「ミラクル・ビーム!」


ツクシを包む虹色の光の中から、真下にいるクウを狙って光の柱が姿を現す!!


「気配さえわかれば……避けられる!」


クウは空中に飛び上がり、ビームをかわす。


「まだまだ!ミラクル・ビーム・レンダ!!」


ツクシは空中を飛びながら、クウに向かって追撃を続ける!


「くっ……アタイを、アタイをなめるなああ!!!」


地面に向かって水の斬撃を放ち、クウはその反動で体勢を変え無理矢理ツクシの攻撃をかわす。


そしてツクシの頭上を取ったクウは、落下の勢いでツクシに攻撃を仕掛ける――


「これで終わりだあああ!!」


「アイドルは……アイドルは、強い!!!!」


虹色の光を踏みながら、クウに真っ向から立ち向かうツクシ。最後の攻撃は、拳で――


「ミラクル・パンチ!!」


光の旋風が空へと舞い上がる。その中からツクシを姿があらわれ――その背後で、砕け散った相手の魔力が花火のように炸裂する。


ツクシ対バンダナビキニ、勝者――ツクシ。彼女は、アジサイたちがいる方を見つめ、微笑んだ。



「ツクシさん……かっこいい!!」


そしてその戦いを、アイネも見守っていた――カリンはアイネを守るのに精一杯で、そんな余裕はなかったみたいだが。


「なんだこいつ……防御硬すぎるよ!!」


「はあ、はあ……アイネちゃんは、私が守る……!」


「ね、ねえ!クウの姉御が負けたよ!」


「うそっ!?あの姉御が……」


すると、どうやら総大将の敗北の知らせを耳にした敵たちが、少しざわついているようだ。恐らく、敵船の方で統率が取れていたはずの敵は、今頃――


「アイネちゃん!!今よ――」


「うん……っ!」


その一時を、ずっと待っていた――


「させるかああ!!!」


すると、遠くから強烈な魔法がアイネに向かって撃たれる!


「っ!あれはアジサイの……防御が間に合わない――」


「――大丈夫。私がいる」


そのとき、スミレがアイネの前にあらわれ、棒で攻撃をガードする。完全に防ぐことはできないが、少なくとも時間稼ぎには十分だ――


「アイネの邪魔はさせないっ!!!」


「スミレさん、ありがとう。」


深呼吸を一つ、呼吸を整える。アイネは、守られながらも、この戦いをずっと見守っていた。カリン、ランさん、スミレさん、ツクシさん。それぞれの戦いからはそれぞれの思いが感じる――うん、それは少し言い過ぎかな。でも、彼女たち、魔法使いって、かっこいいな――


「そうだ、私も、魔法使いだ」


狙いを合わせ、呪文を唱える――


「――――」


アイネの脳内に、ある声が響く。見知らぬ声なのに、なぜかアイネは懐かしさを感じる。そして、その言葉を、口にしてみる――


「――桜龍破おうりゅうは!!!!!」


ひとひらの炎のサクラが、杖の先にあらわれる。そしてひとひら、またひとひらと……またたく間に、その花びらは巨大な竜巻となった。その炎柱の竜巻は、龍のごとくうなりながら敵に向かって一直線に飛んでいく。


風も、海も、敵も炎もすべて巻き込み、すべてを破壊する。まるで、魔法による絶景――


「きれい……」


カリンが、ぽつりと呟く。ひらひらと、役目を終えたサクラが空を舞う。


カリンはそれを手に取るも、すぐに塵となる――


遙か遠くにあったはずの敵船も、跡もなく消えていた。


「……どうやら、負けのようだな」


アジサイはそう言い残すと、戦場を後にした。


風がやんだ。そして、じきにこの霧も晴れるだろう――



「アイネ!すごいよあなたは!あんなすごい魔法はじめてみたよ!」


戦いを終えた一行は、ひとまずキャンプバスに戻っていた。ツクシたちはこれから忙しい後片付けに追われるだろう。


そして我らがヒロインのアイネは、すっかりヒーローとして扱われているようだ。


「いやあ、あれはまぐれだよ……」


「まぐれなわけないでしょ!正直あの威力は、伝説の魔法にも匹敵するよ!ひょっとして本物の伝説魔法だったりね!」


「伝説……魔法?」


「その名の通り伝説の魔法だよ!伝説だからよくわからないけど……とりあえず、すごいよ、アイネ!!」


「えへ、えへへ……(あの声はなんだったんだろう……まあいいか)」


ワイワイと盛り上がる女の子たち。傷だらけになりながらも、この一時の暇はとても貴重で、美しい時間だ。


ツクシの妹、ランもコーヒーを飲みながら一休みしている。彼女もこの戦いで大量の雑魚敵を相手に奮闘していた。


「いやー戦いの後の一杯はしみるねえ~……おやあ?このボタン光っているぞ?押してみよう、ポチッ」


『こらあああ!!!カリン!アイネ!連絡が遅いぞ!!!!』


「しょ……所長!!!連絡するのすっかりわすれていた!!」


どうやらそれは通話用のボタンだったらしい――車内のモニターには、マーシュ所長の顔がどアップで映し出されている。


『……っておやおや、ブゼンの皆さんではないか!ご無沙汰!』


「マーシュさん。お久しぶりです……その報告とやらは、私がかわりにしましょう――」



マーシュ『なるほどなるほど……つまりあれがあーでこれがこーね。完全にわかった!そこにいるのが……スミレくんね!』


スミレ「!!は……はい、ナカ・スミレです」


マーシュ『お礼を言うよ!よく頑張った』


カリン「実は、彼女を製作所にスカウトしようと思うんですが」


マーシュ『おお!そうかそうか、それで、スミレくんはどう思う?』


スミレ「わ、私は――」


マーシュ『考えがまとまらないなら、返事は急がなくていいよ!そうだ、迷うならとりあえずうちの連中たちの旅について行ったら?インターンシップってことで給料も出しちゃうよ~』


スミレ「そ、そうですね……それなら、是非同行させてください」


マーシュ『らしいよ!カリンくん、アイネくん!スミレくんをよろしくね!』


カリン&アイネ「!!わかりました!」


マーシュ『それで?チクゼンのお嬢ちゃんたちは?』


ツクシ「……わかりません。恐らく本拠地に戻ったのかと」


マーシュ『……カリン!アイネ!ちょっとこっちに来て』


カリン&アイネ「っ!は、はい」


マーシュ『君たちは、今日中に西海道から出て行きなさい。これは業務命令よ』


カリン「えっ、でも……」


マーシュ『いいから。それと、三日に一回連絡するように。じゃあね(プツン)……』


全員「……」


ツクシ「えーと……どうやら今日中にここを出ないといけないようだけど、橋はまだ通行止めだし……」


スミレ「それなら問題ない……丁度あんたたちにもお願いしたかったことだ。少し準備してくる、出発の支度でもしておいてくれ」


そう言い残すと、スミレはどこかへ去って行った。


カリン「……マーシュ所長の勧誘、荒々しかったね。スミレちゃん嫌がっていないかな……」


ツクシ「その心配はないよ!実は彼女も、そろそろキチンとした職に着きたいと思っていたはずよ」


カリン「でも、さっき――」


ツクシ「ああ、あの件ね。あなたたちが来たことによって、恐らくもう解決しているはずよ」


カリン「えっ?」



数時間後。


アイネたちは、スミレに言われた集合場所に来ていた。そこにあったのは、ボロボロの橋――


かつて、この橋は職人たちの最高傑作だった。毎日たくさんの人や車両を対岸へと運び、長い歴史を見てきた。


しかし、数年前、この橋もついに寿命を迎えた。たくさんの人々に感謝されながら橋としての生涯を閉じたその日、スミレは一人浜辺で座りながらその景色を見つめていた。橋を渡る最後の一人が橋から降り、その後の式典も無事行われ、そして人々も去った後も、スミレはずっとそこで座っていた。すでに職人たちは亡くなっており、スミレも立派な匠として成長していた。かつて、職人たちに言われた言葉――


「俺たちが死んだら、お前にこの橋を解体してもらいたい」


スミレは、その言葉通り、橋の解体に取りかかった――しかし、「解体屋」と呼ばれた彼女でも、この橋を壊すことはできなかった。そして年月が経ち、風化によって橋はボロボロになっていた――そこで彼女は、もう一回この橋にチャンスを与えることにした。恐らく、車一台分でこの橋は崩れ去るだろう――そのような計画を思い浮かべつつ、スミレはずっとこの橋のメンテナンスに時間をかけ、そのためこの地から離れることを拒んでいた。


そして、今日、その計画を実現させる時が来た。最後のメンテナンスを行ったスミレは、ツクシたちに別れの挨拶をすると、アイネたちと一緒にキャンプバスに乗り込んだ。


そして、車はゆっくりと走り出す。


「スミレ、ツクシさんから話を聞いたけど……本当にいいの?」


アイネが、スミレに質問する。スミレは、前を見つめながら、微笑んでいる――


「ああ。あんたなら、きっと――」


バスが橋を渡り始める。ギシギシと橋は悲鳴をあげ、地面にヒビがあらわれると同時にがれきが崩れ始める。


車内は大きく揺れ、アイネとカリンも大騒ぎだ。


「心配するな――対岸まであんたらを運ぶまだ、こいつは崩れない。私が保証する」


バスは、進むのをためらわない。その時、スミレは誰かに名前を呼ばれた気がして後ろを振り向く――


「――」


そして、バスは対岸へとたどり着く。同時に、橋の地面にあったヒビとヒビが繋がり、真っ二つに割れる――轟音を立てながら、無数のがれきと化しそれは海の底へと沈んでいった。


「……うわあ、橋があったはずの場所になにも残っていない……」


「そういえば、さっき後ろを振り向いていたけど……スミレ、なにかあったの?」


「いや、なんでもないよ。」


海風に吹かれ、スミレの長い髪の毛がなびく。


「それより、改めてよろしく――ナカ・スミレ、匠。しばらくはお世話になるよ!」


「……うん!よろしくね」


そして、アイネたちの旅はまだまだ続く! つづく!


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