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魔女っ子ぎゃんぐすたー!  作者: やよいつや
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Epsode6 希望の灯火(中)

「はあ、はあ……なんて強さだ」


「スミレさん……っ!くそっ、ただ見つめていろと言うのか――」


スミレ対フウコ、ツクシ対バンダナビキニ。目の前で起こっている2つの戦いを、なにもできぬまま見つめるアイネとカリン。


「どうして、チクゼン武家の人たちが海賊の味方をするの……?」


「……共通の敵を持つもの同士、って感じだろう。チクゼンとブゼンは昔から仲が悪く、縄張り争いをすることも少なくない。ただここ最近は、アイドルバトルという形で競争をするようになっていたが……」


風船ガムを膨らませ、目を細めスミレをにらみつけるフウコ。どうやら彼女の魔法は、雷属性のようだ。


「まずは金髪の方とやりたかった……まあいいや。お前からやるぞ」


「……アイネ、カリン。この戦場の要はあんたたちだ」


「えっ?!」


「例え私とツクシさんがそれぞれの相手を打ち破ったとしても、あそこで見ているやつらが手を貸せば戦局は変わらないだろう――一撃で敵の船ごと吹き飛ばせる攻撃でもない限り、ここを守り切ることはムリだ」


「……つまり、私の魔法、を――」


アイネは、懐に隠している最後の杖を、ギュッと握りしめた。


「そして、私の仕事は……」


スミレが棒を構え、低い姿勢を取る。


「あんたを倒すことだ、フウコ」


「……ふーん」


クロダ・フウコ。「TiKS」では不思議っ子担当をしている彼女だが、チクゼン武家においての立場もかなりの謎だ。凛として人の上に立つ姉と比べると、彼女は人を仕切ることもなにかを好んでやることもあまりない。毎日、猫のようにボーッと空を見つめ、姉の影に隠れてのんびりと日常を過ごしている。


しかしそんな彼女が、姉以上の負けず嫌いであることを知る人はあまりいない――「自分以上の才能を持っている」人間に対し、特にそうだ。その人たちより優れていることを証明するだけに、彼女は魔法を磨き続け、その魔法で敵をねじ伏せてきた。そして、自分の方が優れていることを証明した瞬間に彼女の敵意は消え、また普段通りガム風船を膨らませながら姉の側に戻るだけだった。


「……真正面からかかってきても、お前の勝ちはないと思うが」


「ふふっ……関係ないさ。私は逆境の方が好きなんでね」


「……お前のような人間が、一番嫌いだ」


パチンッと風船ガムが破裂する。そして、空気が震えだし、フウコの髪の毛が広がる――


「1分で終わらせるぞ」


大きな電気の球が、フウコの頭上にあらわれる。


「くっ……なんて電流だ。こっちまでビリビリしてくる」


「カミナリ――ダマ!」


フウコが手を振り下ろすと同時に、悲鳴のような轟音を立てながら電気の球がスミレを襲う!


「解体屋を……」


その表情には、恐怖などみじんも感じられない。敵の巨大な攻撃を目の前に、スミレは一躍し迎え撃つ。


「なめるなァ!!!」


スミレは今こそ匠としてステージの建設などをしているが、かつては「解体専門」の職人だった。たくさんの優れた建設職人に囲まれながら――



「おーい、スミレ!また派手にやってくれたのう、ハッハッハ!」


時を遡ること十数年。幼いスミレの周りにいるのは、年配の職人たちだ。そして彼らが指さす先にあるのはただの更地――数分前まで、そこには一軒の小屋があったはずだったが。


「うるせえジジイ!文句でもあんのかよ!」


スミレは、物事がつくころからこの職人たちの元で建築を学んでいた。砂のお城を作りながら遊んでいるうちに、いつの間にか土魔法を身につけてしまっていたようだ。しかしそのスキルは一向に成長せず――というか、彼女は職人たちの力仕事を時代遅れだと思っているようで、いつも魔法を使って自分の実力をアピールしようとするも、結局作品を台無しにしてしまい学びとしての進捗もあまりないままだった。


しかしその解体の技術だけは確かなものだった――反抗期な彼女は、日頃の鬱憤を晴らそうといつも職人たちが作った小屋とかを破壊して楽しんでいた。


「文句などあるわけないさ!俺たちの古い作品を壊してくれてありがとう!」


「さーて新しい小屋でも作るか!やるぞ!」


ごらんの通り、職人たちはまんざらでもないみたいだ。ただその陽気さは、スミレにとってはあまり喜ばしいものではないようだ。


「ちっ……この変態ジジイめ!自分の作品が壊されて喜んでいるやつがどこにいる!?」


「スミレよ……物というのは長続きすればするほどいいものではない。物が壊れて初めて、人間は新たな物を作りたくなるからな」


「はあ……?」


「いずれお前にもわかるさ……まあ、わからなくてもいい。その「解体屋」としての技術で俺たちの時代遅れな作品をすべてぶっ壊してくれ!」



「なっ……」


大きなカミナリダマが、跡もなく消えていった!


「お前、どうやって……」


「難しいことではない……こいつを地面に叩きつけたら自然に消えてくれる、そう思ってやってみたら……いけた」


「ふーん……自身がダメージを背負ってまで、ね。少しは、見直したよ」


スミレはかなりの深手を負っている。血だらけの両手は、棒を握っているだけで精一杯だ。


「どうしてかわそうとしない?」


「はあ、はあ……さあね」


スミレはチラッと背後を見た。


「……イライラする。早く倒れて欲しいものだ」


「ふふっ。次はこっちの番だ――!!」


勢いよく飛び出すと、スミレはフウコに向かってそのまま猛突進する!


「くっ、そんな捨て身な攻撃ごときで……」


フウコが杖をかざすと、目の前に電磁気バリアーがあらわれる。


「このバリアーには高圧電流が流れている。触れると例えお前だって無事ではいられないだろう――」


「効かんっ!!」


なんとスミレは一振りでそのバリアーを打ち破った!


「なにっ?!!」


「一撃で終わらせるぞ。はああ――」


実力だけで言うと、フウコはスミレに負けるはずがなかったのかもしれない。これまで彼女に刃向かって来た者は、電磁気バリアーに当たると皆シビれて諦めていったのだ。それ故、大した防御にはなっていないそのバリアーの効果を、彼女は過信していたのかもしれない。


粉身呑骨ふんしんとんこつ!!!」


フウコは勢いよく地面に叩きつけられ、そしてその周囲の地面が大きくへこみ、轟音を立てながら割れていく!!


「うああああ!!!」


地鳴りとともに砕け散った大地が舞い上がる――土魔法の渾身の一撃を、フウコが耐えられるはずもなかった。


「……悪く思うなよ。これが私の……務めだから」



「海賊め……「TiKS」のやつらを脅したのか?!」


ツクシは怒りのまなざしをバンダナビキニに向ける。


「脅し?そんなことしてないよ!あちらにいるお嬢ちゃんたちはブゼン侵略に乗り気だったから誘ってみただけ!」


「ふざけるな!私たちはライバルで……友達なんだよ!」


「はいはい、それ片思いだよ。大体裏社会の連中なんて海賊と似たようなもんでしょ……」


「そんなことはない!私たちは誇り高き武家であり……なによりアイドルなんだから!」


海風にかき消されたその言葉は、アジサイの耳に届くことはなかった。その凜として視線は、相変わらず戦況を見下ろしている。


「あっそ……まあいいや。これでアタイはあんたとのタイマンに集中できる……」


すると、バンダナビキニは目を閉じる。風が吹き荒れるなか、次の瞬間その雰囲気が一変する。


「……ミシマ海賊団「副団長」、ミシマ・クウ……やっと本気を出してきたようだな」


海賊は通常、数で相手を圧倒するのが得意だ。しかし、目の前の女は違う――


目を開き、青く光るその瞳に映るのは敵の姿だたそれだけ。タイマンなら海賊団最強、ミシマ・クウ。


「さあ、いくぞ!」


クウは杖を構える。その構えは、まるで侍のよう――


「トビウオ居合いぃぃ!」


まさかの斬り技。刀から放たれた水の斬撃がツクシを襲う!


ツクシは虹色のバリアを繰り出し、その斬撃を止めようとするが――


「水の力をなめないでね!」


バリアは破られ、斬撃がツクシにクリーンヒットする!


「くっ!」


「真っ二つにならなかった……バリアのおかげだね。でも、アタイの攻撃はこれだけではない!」


クウが素早く距離を詰めると、水の斬撃による猛攻がツクシを襲う!


「これは……思ったより厳しいね――」


攻撃を必死にかわす。いつのまにか、ツクシは防戦一方になってしまった。


「無様だな、あはははは!チンピラのくせに市民を守りやがって!アイドルの仲間にも裏切られやがって!」


再び、水の斬撃がツクシの顔に傷跡を残す。


「無様……ね。その通りだよ」


したたる血液はその細い首筋をたどって、地面にポタ、ポタと落ちる。


「あははは!!……はあ?どうしてこんな状況でも笑っていられるんだよ!?」


「……「TiKS」たちも見ているんだ……無様だとしても、私は……負けるわけにはいかない!!」


ツクシは、始終笑顔を見せていた―― つづく!

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