1 世界の始まり/その2
その2
ある時、何もない無の空間に《流れ(レンニズ)》が起こりました。
レンニズは何もない空間を旅しました。
その旅によって無は少しずつ削り取られ、その削りカスから有の可能性が生まれました。
こうして無は有の可能態となったのです。
しかし無はまだそのことを知りません。
そこでレンニズは無にそのことを告げました。
しかし無は変化を拒絶し、停滞を望みました。
レンニズは憤怒し姿を風に変えて無を攪拌しました。
この攪拌によって無から運動と物体が融合した存在、無と有とが重なり合った存在、つまりカオスが生まれました。
風はカオスに満たされた世界を巡幸しました。
この巡幸によって、カオスの濃度は次第に偏っていきました。
ある場所には多く集まり、ある場所にはあまり集まりませんでした。
こうしてカオスは物体の可能態となったのです。
しかしカオスはまだそのことを知りません。
そこで風はカオスにそのことを告げました。
しかしカオスは変化を拒絶し、停滞を望みました。
風は激昂し姿を暴風に変えてカオスを攪拌しました。
この攪拌によってカオスから物体が生まれたのです。
暴風は物体が各々の場所にとどまっている世界を騎行していきました。
物体はまだシステム(機構)を持っておらず、そのために安定を欠いていました。
この騎行によって物体のあるべき位置や状態が区分されました。
こうして物体はシステムの可能態となりました。
しかし物体はまだそのことを知りません。
そこで暴風は物体にそのことを告げました。
しかし存在は変化を拒絶し、停滞を望みました。
暴風は狂乱し姿を雷に変えて物体を打ち据えました。
これによって物体は、システムを保持する物体へと変化したのです。
これらのことは、たった一度だけ起こったのではありません。
最も安定した状態になるまで何度も何度も繰り返されたのです。