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ソウルウォーク★魔都  作者: 神嘗 歪
二章:チートな 創造主 と 雪人たちのゲーム前の予習
38/46

二章:20 「ジジくさいよ、白檀。」

 

――…刀夜たちのプール清掃終了同日の夜。




高級中華料理店での『会食』の後、明星の姿は繁華街のなかにある一軒の小さな立ち飲み居酒屋にあった。


居酒屋にはよくありがちな、木造の昭和感のある陳腐の作りの店内。壁一面には、大きな短冊に筆文字で豪快に書かれた日本酒の名前が貼り出されている。


店のなかは仕事終わりのサラリーマン・サラリーウーマンでごった返し、酒の匂いと酔い人の熱気で火照っている。


その蒸気を外に逃がすように、大きく開け放たれた出入口の近くに、明星は人間の姿に顕現した白檀とともに冷酒を味わっていた。


「見てっ♪ 見てっ♪ コレっ! 菖蒲ってば、実は私のこと神聖視してるってことじゃない?」


スマホの画面に、【ソウルウォーク★魔都】からキャラクタープロフィールの「金星の神子」のイラストを拡大し、自分と並べながら白檀に見せた。


お気づきの方もいると思うが、「金星の神子」は明星を模したモノだ。


『とある都合上』必要なので、菖蒲にゲーム内に組み込むように依頼してはいたのだが、キャラクター原案自体は丸投げしていた。まさかこんな感じになっていようとは…。


「バー力ァ!揶揄されてんだよ、お前。あの気の小さい男の(菖蒲のこと)、ミミッちい抵抗だ。」


それも天文学数値に一回、オープンニング再生時にアニメーションとはいえ明星の顔バレがあるとか、本当にやることがミミッちい。


「それより………お前とこうやって酒を酌み交わす日が来るとはな。」


明星と幼き頃から『縁を結んでいる』白檀は、酒で唇を濡らしながらしみじみと言った。


「ジジくさいよ、白檀。」


「ジジくさくて当たり前だ。こっちは『何百年も』この世に居座ってんだから。」


そう言うと、また冷酒をグイッと喉に流す。


二十代にしか見えない容姿で、白檀のこのセリフ。端から聞いていたらただの酔っ払いの戯言だ。


だが確かその正体は………死ぬことを忘れた猫の妖怪・猫又だった。


でもこんな大勢がいるところなのに、こんなことを平気で喋って良いのだろうか?


よく見れば明星と白檀がいる1メートル半ほどの狭い空間が、床から天井に向かって円柱に陽炎のように微かに揺らいでいる。


そしてこれまたよく見ると、明星の冷酒が置かれているコップの近くに、冷酒を数滴落とし、その上を指で円を書いた跡があった。


これは……日本酒を使った『結界』。外部の人間の意識を、円柱の内側に向けさせないモノ。


結界としては簡易的であまり強いモノではないのだが、『この店自体が結界を補助してくれている』。


ここは居酒屋。さっきも言ったがもし外部に声が漏れたとしても、その内容は酒で思考が麻痺した脳には「酔っ払いの戯言」として記憶に残らない。


そしてこの店のシステム。


よく見れば、店内の酒の品書きには金額が一切書いてない。そして、店の出入口付近にあるはずのレジも無い。


それに店員も異様に少ない。明星の横で大きく開け放たれた出入口は、「いつ、出ても入ってもご自由に」と言わんばかりだ。


「これでは無線飲食し放題じゃないのか」と、お節介な心配をしてしまう。


だが、それがここのシステムなのだ。


お客は入店するなり、自分のスマホからこの店のウェーブサイトに飛ぶ。そしてそこからメニューを見て、食べたい料理をスマホから注文する。


お酒はセルフで、店奥にある各種の樽型のサーバーにスマホをかざし、飲みたい量を打ち込むと持っているコップに自動で注いでくれる。


飲み食い後の清算は、全部スマホのキャッシュレス決済で済むというわけだ。


外食だというのに第三者との関わりを出来るだけ削ぎ落としたこのシステムは、店という決められた空間に大勢いても、個々の意識はスマホと共有したい親しい者にしか向かなくなる。


もしそこで、この国の平和を左右するほどの陰陽師が怪しい算段していても…。ましてや、ここにいる全員を一瞬で屠れる大妖怪が舌舐めずで酒を呑んでいたとしても…。


……気づく者はいない。

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