二章:18 「……心霊スポット?」
「そう。『スマホアプリゲーム【ソウルウォーク★魔都】の敵出現場所は、心霊スポット・都市伝説の噂される場所とリンクしている』…ってな。」
言い終わると雪人は刀夜の首から腕を外し、横に座り直す。そして持っているビニール袋から、今度はデザートであろう棒つきのチョココーティングのアイスを取り出した。
「ホットスナックと一緒に入れられて、アイス溶けてないのか?」と思いつつも、雪人の言葉を反芻するように「……心霊スポット?」と呟く刀夜。その脳裏に、火魂をゲットしたときの道端に供えられた花束が過った…。
「調べ続けたら、似たような話をネット内でいくつかみつけた。「自殺の名所でレア敵キャラと遭遇した」とか「墓場が魑魅魍魎の出現率が高い」とか「パワースポットって言われる神社仏閣に、魑魅魍魎か宝玉がある場合が多い」…とかな。」
言っている間に、雪人は跡形なくアイスを食べ終える。そして残った棒を、指揮棒みたいに振り回してみせた。
また刀夜は、雪人の言葉に思い当たる節があった。
道すがらゲットしたのは、火魂のほかにも宝玉もしたのだが、その宝玉をゲットした場所はとある神社の付近だった。
たしか剣道部の後輩だった真竹緑香が、「先輩。あそこの神社。『縁結び』でかなり有名なんですよ。」と、何故かモジモジしながら、まったくそこいらの縁が無さそうな自分に教えてくれた。
あのときは「?」と思いながらも世間話と流して聞いていたが、『縁結び』と言えばよくテレビやネットでパワースポットとして取り上げることが多い。
始めは偶然と思っていた刀夜だったが、もうこうなるとゲーム運営側の悪趣味な作為的意図を感じる…。
そしてもう一つ感じるのは…。
チラッと雪人を見る刀夜。
(……本当、雪人は、こういうことには鋭いというか、頭がキレるよなぁ。)
たぶん、刀夜が御膳立てされてやっと気づいたことも、雪人はゲームを始める前の予習の時点で気づいていたのだろう。
雪人は物事の解析能力が異常に高い。ただ行動が破天荒過ぎて伴わない。……簡潔に言えば、メチャクチャ人間だ。
こういった手合いの人間は人の意見など必要とせず、自分が最善と思う方向に迷いなく自己完結できる。
ふと…後輩の緑香を思い出したことで、昨日言われた言葉が頭に浮かぶ…。
――…
「どうして先輩は、あんな人と一緒にいるんですかッ?!」
(……どうしてかなぁ。雪人は俺なんか、いてもいなくても同じだろうし…。)
それどころか雪人と一緒にいると、刀夜は毎回巻きぞいをくらって悪童のレッテルを貼られまくられる。
(・・・・・・・……アレっ?本当、どうして一緒にいるんだ?俺は???)
複雑な表情で、自問に疑問符を乱舞させる刀夜。




