二章:6 「あっ、季節のフルーツ入り杏仁豆腐とタピオカ入りココナッツミルクと揚げごま団子をくださーいっ。」
「………『金銭面』? 全部、国からの支援だろ? それも秘密にプールされていた裏金……あ"…ッ。」
…と言ったところで、「裏金」と口にしてしまったことにハッと藤原総理を見た菖蒲が慌てて口をつぐむ。
すると藤原総理は怒りはせず、「裏金」の否定もせず、菖蒲に向けてカラカラと笑った。
「菖蒲君。今回のプロジェクトに関して、国からは一切金銭面『は』支援してないよ。」
「………えっ?!」
驚く菖蒲。
今回のこのプロジェクトは早急に進めなくては行けなかったため、時を金で早回しするかのごとく莫大な資金が注ぎ込まれた。
確かに【Hypnos】を作った菖蒲にも、製作依頼時に明星は「一切、お金のことは気にしなくていいからっ♪」とは言われたが…。
「当たり前でしょっ! 国の予算、即ち大切な国民の税金を、むやみやたらと使わせていただくなど言語道断っ!!」
お茶を飲んで、口の中をスッキリさせた明星が声高らかにそう発言する。
「……… まさか自分で出したとか言わないよな?」
菖蒲も「ほぼそれは無い」とは思いつつ、聞いてみる。
「まさか―――ぁ。私のお金は、私の汗水流した労働の対価だよっ。だから、私のためだけに使うべきだっ!」
ムフーゥと意味不明に胸を張る明星。「思った通りだ」と思いつつ、菖蒲は白けた目で質問を続ける。
「………いや、それはどうかと思うが……それじゃあ、何処から?」
明星は不適な笑みを更に深くした。
「お金はね、血管内の血流と同じで、一ヶ所に無駄に溜まると経済が循環しなくなるんだよ。だから、『無駄に私腹を肥やしていた』例の四社から『私の口添え』で出してもらった。」
「………四社って……あの「六鐘重工業」「大宮祭建設」「永久森製薬」「百華プロダクション」にか? あそこらは、ただのゲームのスポンサーじゃないのか?」
そう。この四社は、「ソウルウォーク★【魔都】」のスポンサーだけのはずだ。それもいくら社名広告料といっても、もうそこで破格の金額を出している。
「ソウルウォーク★【魔都】」自体その難易度から、事前予測でも国民全体に浸透できる大人気ゲームにはならないと判っていた…のにだ。
それもおかしいと思っていた菖蒲だが、そのうえスポンサーを謳っていない【Hypnos】にも出資していたとは…。
「………………。」
菖蒲は長い前髪の隙間から明星をジッと見ながら、下唇あたりに手を当てて考え込む。
その間に明星は、こんな機密的話をしているにも関わらず「あっ、季節のフルーツ入り杏仁豆腐とタピオカ入りココナッツミルクと揚げごま団子をくださーいっ。」と、自分の分だけ追加オーダーしている。
菖蒲はそれらが終わったのを見計らい、ゆっくりと下唇から手を外すと…。
「………お前、その四社に『何をした』ッ?」
…と聞いた。




