二章:3 「一攫千金ッッ??!」
「『一攫千金』ッッ??!」
目を剥き驚く刀夜。でもすぐに考え直した。
「はははぁ……いや~でも、ゲームで一攫千金だなんて、ドラマやマンガじゃあるまいし~~~ぃ。」
「それがあるんだよ、刀夜。このゲームのスポンサーには、日本で最大級の企業が四社もついてんだから!」
雪人は言い終わるなり、持っていた刀夜のスマホを所有者本人に放り投げ、今後は自分のスマホを取り出してイジり始めた。投げられた刀夜は落としそうになるもなんとかキャッチし、涙目で雪人に「投げるなーぁ!」と吠える。
だが雪人はそれを無視して、自分のスマホの画面に出したニュース記事を刀夜に見せた。
そこには「六鐘重工業」「大宮祭建設」「永久森製薬」「百華プロダクション」の各業界トップクラスの四社が、無名のゲーム会社「イノセント」と事業提携支援を結んだ。……と書いてある。
「イノセント」という会社以外は、どの会社も高校生の刀夜たちでも知っている大手だ。
ただ…。
(……確かに、最近テレビとかで『良く見る』会社ばかりだけど…。)
……刀夜は少しばかり眉を潜めた。
「そのスポンサー企業が、より多くより強い敵を倒したプレイヤーまたはグループに、賞金と称した仮想通貨を贈呈するらしい。仮想通貨は当たり前だけど、普通のお金としてインターネット内での買い物や、リアルでスマホからの支払いもできるだってさっ。」
雪人の切れ長の目がキラキラ光る。反対に刀夜は、まだ怪しんでいた。
「………一攫千金って言ったって、大した金額じゃないんじゃないか~ぁ?」
そんな刀夜に雪人は顔を近づけて言った。
「それがーぁ、『条件』にもよるけど賞金額は一千万のときもあるらしいぜ!」
「まッ、まじッ!?…………いや…イヤイヤイヤ、ゲームごときで一千万だなんて、いくらスポンサーだからって企業側にそれだけ出すメリットが無いでしょ~ぉ。」
「まあだから敵を倒すだけでなく、さっきも言った『条件』をクリアしたうえでの高額らしいけどな。あのぐらいの大企業にしてみれば、その金額もプレイヤーたちを介して会社名を広めるための広告料程度なのかもな。」
それを聞いて刀夜は少し納得する。いわゆるゲーム中にその企業の広告表示が出たりするアレなのだろう。
「…だとしても、VRゴーグルを今買うのは時期尚早立だろう。俺は、アプリも含めこの手のゲームしたこと無いんだぞ。」
「バー力ァ!こーぉいうのは気持ちの問題なんだよ。先に投資をしておけば、その分取り返そうと思うだろっ!それに聞いた話だと、今までゲームをやりこんでいなかったようなヤツでも、高額賞金をゲットしたのがいるらしいし。」
雪人は、どこまでいってもポジティブだ。なんだかうだうだネガティブに考えていた自分が馬鹿らしくなってきた刀夜。
(………まあいいか~ぁ。雪人が言うほど大金には興味無いけど、謹慎中は勉強する気にもなれないし…。)
「わかったよ。試しにゲームアプリから初めてみるよ。」
それを聞いた雪人は「ウシッ!」と、スマホの持っていない手のほうでガッツポーズをする。
「んじゃあ、明日十時に『ここ』に待ち合わせなっ!」
言い終るなり、バスの停留に向かって走り出す雪人。ちょうど、帰路につくためのバスが来たようだ。
そんな雪人に「ああ、分かった。」と言って手を振る刀夜。
雪人を乗せたバスが、駅前のロータリーから出ていく。笑顔で見送っていた刀夜だったが………ハッと気づく。
「あれっ?俺ら、明日から『自宅』謹慎だよ……なぁ?」
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