二章:1 「どうして俺は、こんなところにいるんだーーーア"!?」
ーー…駅前のロータリー。
「どうして俺は、
こんなところにいるんだーーーア"!?」
大きな紙袋を腕に下げながら、両手で頭を抱えて天を仰ぐように吠える刀夜。プール清掃が終わって帰宅するはすだったのに………こんなところにいる。
夜七時。周りには駅前だけあって、帰宅やこれから呑みにくり出すであろう社会人の大人が大勢行き来している。
その通行人たちは、いきなり大声を上げた男子高校生を訝しげに一瞥しながら通りすぎていった。
刀夜は多数のイタイ視線にハッと我に返り、赤面しながら小さくなる。
「……それもなぜ俺は、学校帰りに馬鹿高いVRゲーム用のハードウェアを『買わされているんだ』???」
声も小さくするも、今の状況における自問自答は止まらない。
刀夜が言ったとおり、持っている紙袋の中には今一番の最新型のハードウェア内蔵のVRゴーグルが入っていて、ほんの数分前に駅に隣接している商業施設の中の家電量販店で購入してきた。
「いいじゃん。お前、こずかいの使い処なくって、ひたすら貯めぱなしなんだし。自宅謹慎中、暇だろ?」
横にいた雪人がスマホをイジりながら、シレと答える。
「そういう問題じゃない!俺はゲームなんてしたことないし!」
「だからハード買ったんだろ?」
「違うッ!『買った』じゃなくって、お前に『買わされた』んだッ!」
小さくした音量が、雪人と話すにつれ段々と上がっていく。
またもや「五月蝿い!」とばかりに周囲の通行人からジロッと睨まれる刀夜。慌てて自分で自分の口を塞いだ。
「~~~~っっ……っていうか、お前は何で勝手に俺のスマホをイジってんだよッ?」
自分の口から手を外した刀夜は、ヒソヒソ話でもするかのごとく雪人に顔を近づけて囁く。
実は家電量販店から出るなり、持っていたスマホを雪人に奪われてしまった。
「俺ってば優しいから、お前の代わりに【ソウルウォーク★魔都】をダウンロードしてあげてんの。」
スマホの画面から視線を離すこと無く、雪人は恩着せがましく言う。
「……【ソウルウォーク★魔都】……ってなんだ???」
刀夜の頭の上に疑問符が飛ぶ。
「簡単に言えば、スマホ内蔵のGPSによる位置ゲー(位置情報ゲーム)アプリの一つだな。ほら、実際に歩いてスマホの画面からモンスターをゲットしたり倒したりする「アレ」みたいなもんだ。ただ、この【ソウルウォーク★魔都】だと、狩るのはモンスターじゃなくって魑魅魍魎らしいけどな。」
「魑魅魍魎???」
ゲームをしない刀夜でも位置ゲーは解ったが、聞き慣れない「魑魅魍魎」という言葉の意味が解らず、小首を傾げる刀夜。
「んー…。俺もよくわかんないけど「魑魅魍魎」ってオバケとか妖怪みたいなものらしいぜ。」
「フムっフムっ……って!VRゲーム用のゴーグルを買わせたのに、アプリゲームをさせる気かッ?!」
「また声が大きくなってるぞ。そんなに大声出したいなら、別に周りなんぞ気にしなくてもいいんじゃねぇ?」
ここでやっと雪人は横目で刀夜を見る。反対に刀夜は雪人の視線から目をそらし「……公然の場で、そういうわけには…。」と口ごもる。
雪人はそれを聞いて、つまらなそうに「あ、そう。」と素っ気ない返事をすると、視線をスマホの画面に戻した。
そして話も戻す。




