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ソウルウォーク★魔都  作者: 神嘗 歪
一章:どうやら俺は、『巻き込まれ体質』のようで…。
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一章:12 「へっぶしゅッ!へっぶしゅッ!へっぶしゅッ!」

 

ーー…学校校庭内。




ようやくプール清掃が終了し、刀夜は校庭を横切るように校舎に向かう。


だが何故か、今は刀夜一人だ。理由は少し前に遡る。


雪人が、清掃道具を片付けた直後「へっぶしゅッ!へっぶしゅッ!へっぶしゅッ!」とくしゃみを連続した。そして、プール清掃のときも雪人はくしゃみをしている。


まあ、当たり前だ。


日に日に最高気温が上がってきているとはいえ、まだまだ日が傾いてくると肌寒くなる初夏。それなのに「動くと暑いから」っと言って、半袖とハーパンで汗も拭かずに水掃除をしていたのだ。体が冷えるに決まってる。


刀夜はそんな雪人に、「たくっ。プール入り口の鍵は俺が岩木先生に返して来るから、雪人は先に制服に着替えてこいよ。」と言った。


雪人は「そーぉするわーぁ。」と答え、そして二人は一旦別れた…。




…ふと、刀夜は足を止めた。


校庭内を見回すと、そこかしこで元気な生徒の声がこだまする。声をあげているのは、もっぱら運動部の部員たちだ。


「……そうか。もうそんな時間か。」


授業を出ずに掃除をしていた刀夜は、今が何時だか分かっていなかった。どうやらもう放課後らしい。


すると、校舎に向かっていた体を方向転換した。


この時間、たぶん岩木先生は校舎内にはいない。


(いるとすれば、『あそこ』か…。)


場所の検討はついている。体をそちらに向けたのにも関わらず、第一歩を踏み出すのに………刀夜は躊躇した。


どんな顔して『そこ』に行けばいいのか、迷っていたからだ。


自分は『自分に正直に選択した』。それに対して後悔はないが、心苦しくはある。


刀夜は、胸に詰まったモノを少しでも「はぁ…。」と吐き出すと、気持ちを切り替えるように顔を上げ直し『そこ』に向かって歩き出した…。




…『そこ』は、校庭から少し脇に入ったところにあった。


和風建築の平屋の建物。大きさとしては体育館の4分の1のぐらい。


その建物の入り口に立つと、『クセ』で背筋をピッと正した。そして入り口の引き戸を開けると、刀夜はゆっくりと丁寧に一礼をして入る。


すると建物の奥から、「イヤー!」や「ヤーァ!」といった気合いの入った複数の声と、スパーンッ!といった鋭い殴打音が聞こえてきた。


ここは高校では珍しい「道場」と言われる場所だった。


刀夜が通っている月星高校は、創設者が「健全なる肉体には、健全なる精神が宿る」と言ったことから、古武道を重んじる人だったそうだ。だから、古武道としてあげられる剣道・弓道・柔道、この三つには各自道場が設けられていた。


そして、ここは剣道部の道場。そして、刀夜にとっては『古巣』。


室内は深い鳶色の板の間になっており、窓から射してくる傾きかけた日差しが反射するほど綺麗に磨き上げられている。


そこには袴姿の男女、合わせて30人近くの生徒が防具をつけ竹刀を持ち、各々対戦方式で練習をしていた。


目を細める刀夜。この光景、まだ数ヶ月しか経っていないのに、とても懐かしい。


すると練習していた一人が、入り口に立つ刀夜を視線の端に捉えるなり、「あーーーっ!」と甲高い声を上げた。


思わずビクッと後退りしそうになる刀夜。

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