一章:9 「……いい加減にッ、しろッッ!!」
カツン…ッ。
竹の先が三年生の顔に激突する寸前ッ。その先は横からの流れるような力により、落下地点の座標を狂わされた。
竹の先はゴッ!と凄い音をたて、三年生の顔横の地べたに数センチめり込んでいる。たぶん直撃していたら、三年生は重傷を負っていたことだろう。
三年生はそれを見たとたん、白目を向いて卒倒してしまった。
「………………ア"ッ?」
雪人の顔から笑みが消え、横やりを入れてきた人物をギロッ!と睨む。
「アホユキッ。……それはやりすぎだッ。」
三年生を助けたのは………刀夜だった。
「…なんだよッ。邪魔すんなッ、刀夜ッ!」
どうやら雪人は、楽しみを奪われたことにご立腹らしい。
「邪魔しなきゃ、ヤバイだろ?……『お前が』。」
「ッ…!」
雪人の目が鋭くなるッ。
三年生の上から降りると、地べたから竹の先を引き抜くき、邪魔した刀夜に向かって一直線に突きを放ったッ。
それも突きの連続技ッ。
速いッ。そして皆、体という体の急所ばかりを狙っているッ。本気だッ。
本気で、友である刀夜をトりにきている。
でも……まあ、こんなことは雪人と知り合ってか『いつものこと』なので…。
(んーっ。「突き」だけでなく、もっと技のバリエーションをつければ、もう少し『さま』になるんだけどなーぁ。)
…などと悠長に分析している刀夜は、攻撃をかわすか、雪人の突きの竹の側面を同じ竹の側面で受け流している。
剣道に勤しんで『いた』刀夜にとって、『素人』の雪人などに負ける気がしない。
それでも雪人の突きの連弾が続く。
あまりのしつこさに…。
…イラッ(怒)。
刀夜のこめかみに怒りマークが点灯し…。
「……いい加減にッ、しろッッ!!」
ドッコンッッ!!
ここで始めて、刀夜が攻撃に転じたッ。
突きの隙間を縫った刀夜の竹の棒が、雪人のどって腹に横一文字に深く入る。
いわゆる剣道でいう「胴」だ。
その流麗な流れとは裏腹に破壊力は半端なく、あの三年生の鉄パイプを額で受け止めた雪人が、端に積み上げられた荷物の山までフッ飛ぶ。
ガラガラと崩れる荷物の山。雪人の足だけが、そこから飛び出ていた。
ため息混じりに荷物の山に歩み寄る刀夜。
「目ぇ覚めたか?ユキ。」
その荷物の山に手を伸ばすと、中から雪人がその手を取った。
引っ張り起こされた雪人は、血だらけの頭をポリポリ掻きながら…。
「…………………あーあ、スッキリしたーぁ。」
…と呟く。
それを聞いた刀夜はドッと疲れたように項垂れ「…あっそう。それは良かったな。」と返した。
とはいえ、これで一件落着と思って一息つく刀夜。
だが、その背後から大きな人影が近づく…ッ。
「お前ら~ぁッ!これはどういうことなのかッ、説明してもらおうか~~~ぁッッ!!」
「ヘッ?」×2
……その影の正体は、岩木先生だった。
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