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ソウルウォーク★魔都  作者: 神嘗 歪
一章:どうやら俺は、『巻き込まれ体質』のようで…。
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一章:8 「イヒヒ…ッ。」

そんな雪人の背後に、黒い人影が近づく。


そして…。



  ゴッッ!!

        「痛…ッ!」



頭部に脳まで響く殴打ッ。


足元に転がっている二人の殴打よりも何倍も重い破壊力。普通なら、この一発で地べたに沈んでもおかしくはない。


頭部に手を回し、押さえながら雪人が振り向く。そこには想定通り、あのフラれた三年生が立っていた。


ただ想定外だったのは、その手に鉄パイプを持っていたこと。


雪人がそうだったように、荷物置き場とかした体育館裏には武器になる得物はいくらでもあったということだ。


「クソッ!クソッ!滅茶苦茶にしてやるッ!!」


フラれた三年生は、完全にブチ切れている。


雪人は後頭部に回した手にヌルッとしたモノを感じた。そしてこめかみのあたりから伝い流れる生暖かいモノを感じた。


更に…。


 ドゴッ!

      ゴバッ!

           ガツンッッ!!


体中に鉄パイプの重い攻撃が入る。


三年生の腕は雪人の二倍近い太さ。それを感情に任せてフルスイングしているのだ。いくら頑丈さが売りの雪人でも、ダメージがレッドラインまで蓄積していくッ。


だが、雪人に蓄積していっているモノは………それだけではなかった。


錆びた鉄のような匂いが、雪人の鼻孔をクスぐる…。


             「…イヒッ。」


……雪人は、こんな時でも歯をくいしばるように……笑った。


このとき脳裏には『色々な映像が駒送りのように流れる』……が、『いつもの通り』それを無視する雪人。


…ただただ……この匂いの『快楽性』だけを楽しむ。


雪人もまた、理性を失っていた。


三年生に向かって無防備に振り向いた雪人。その額に鉄パイプが激突するッ。


「トッたッ!……………ッッ?!」


勝利を確信した三年生はニヤリと笑った……………が、その顔がドンドン引き吊る。


額に鉄パイプを受け止めたまま、雪人が押し戻してきたのだッ。


それも額からダラダラ血が流れているのに、なんとも嬉しそうに…。


(ッッ……コイツッ、頭おかしいッ!!)


そう思った三年生の背筋に、ゾクッと寒気が走ったッ。そしてその狂気に、戦意が消失するほど気圧された。


鉄パイプを持っていた手が緩む。すかさず雪人は竹の棒を持っている手の甲で、その手ごと弾き飛ばす。


がら空きになった三年生の正面を、右足の裏で全体重をかけて腹に蹴り込む雪人。そのまま踏み潰すかのごとく、地面に押し倒した。


急いで起き上がろうと上半身に力を入れたとたん、腹にあった雪人の足が一旦離れ、今度は三年生の喉仏あたりを踏み抜いて、元の地べたに強制的に戻すッ。


後頭部に激痛が走る三年生。痛みでギュッと瞑った目をゆっくり開けると……。


「イヒヒ…ッ。」


……逆光のなか。額の血を擦り拭いた雪人が、悪魔のような歪んだ笑みを浮かべ、三年生の顔面目掛けて垂直に竹の棒の先を振り下ろしたッ。

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