転生1
先日、先輩が自殺しました。
きっと、『(都合の)良い人』を演じるのが疲れたのでしょう。 どんな仕事も卒なくこなす彼女は便利な道具だったことでしょう。
私――杠葉瑞樹はそんな彼女を、狂った社会に残った唯一の良心として慕っていた。
彼女の下であれば、この腐った会社の元で働くという事実から生まれる吐き気も抑えられた。
だがある日、その彼女も居なくなってしまった。
訃報を聞いた時は涙が漏れた。だが何事も無く、良くある事のように処理され、業務が継続していた会社はやはり異常だった。
私は全てに絶望し、現実への興味を失い、虚無を抱えながら虚な現実を無駄に生きた。
お陰様でここ数日の記憶が飛び飛びになっている……。昨日一昨日等何をしたかサッパリだ。
勿論休んでは居ないのだろう。 体に溜まっている『今にも千切れそうな疲労』が教えてくれている。
マトモな業務が出来たとは思えないが、そんな事はもう知った事ではない。
この数日、停止していた現実への興味の代わりに、ずっと脳のリソースを裂いて考えていた事が、ようやく纏まった。
私は、先輩の後を追う事を決意した。
友人等も交友の時間を多く削られてしまい、今は誰が何をしているのか分からない。
家族は心配しないだろう。言う事を聞かなければそれだけで家の外に放り出すような生き物だった。
会社は……先述の通り、先輩以外に特に上げられるような人間関係が無い。
そそくさとこの世を去った。この世に未練など、有りはしないのだから――。