カワウソの身代金
夢の中で、私は知らない街にいた
両側には高い壁
夕日を受けて、橙色に染まってる
足元には石畳
ヒビが入って割れた破片を、青い雑草が持ち上げている
「この袋が気になるかい?」
目の前に男が立っている
焦げ茶色の大きな袋を、大事そうに抱えてる
「この中身が気になるかい?」
艶々した毛皮で出来ている
中には水でも入っているのか、はみ出した部分は、重そうに脇へ垂れている
「持っていくがいいさ」
何も言わないうちに、男は袋を差し出した
予想に反して、それはゴツゴツとして固かった
「誰にも渡してはいけないよ。これは君が持つべきものだ」
男は笑った
影になった顔の中で、白い歯だけが光って見えた
「これは君が持つべきものだ」
言い終えると、男の姿は消えていた
後には小さな川がさらさら音を立てて流れている
私は川を覗きこみ、男が袋を寄越した訳を理解した