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囚人は空に恋する

作者: 堕犬Agウヴァル

初投稿兼初執筆です

未熟な文だと思いますが、ちょっとした時間に読んでいただけると嬉しいです。


私の名前は囚人番号168ここではそう言われている。別にいわれのない罪で投獄されたとかそういうドラマチックな理由でここでいるわけではなく、ただ殺し、奪い、盗み、犯し、暴れ、捕まっただけだ。

この国の最高刑罰は終身刑、私は一生この牢屋の中だ。

その中でも絶対に脱出できないと言われている特殊懲罰房に私は収容されている。

まぁ、欲望のままに生きてきたツケと考えれば妥当な現状だ。

はぁ…嫌だ。

嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!永遠にこの牢獄の中で繋がれたままなんて嫌だ!

自由が欲しい!あの頃の自由が!!!

何が「ツケが回ってきた」だ。何が「妥当」だ!達観したようなことを言いやがって、私はまだ、自由でありたい。

それをあいつが、あのポリ公が殺人現場を押さえやがって。

復讐してやる、この牢獄から脱獄して必ず復讐してやる。


とは言ったもののこの牢獄は鉄壁だ。

脱出した者は1人もいない。

この牢獄は全て機械で管理されている。

1日2食の飯は自動で送られ、監視の目は多数の監視カメラで行われている。

体調管理は腕のブレスレットで測定し、何かあったらすぐに薬が送られてくる。

この牢獄に入ってから人間と一切関わりを持っていない。

日に日に心が折れて狂ってしまいそうだ。

だが私は狂わない。狂いなんてしない。

なぜならもう復讐心によって狂っているのだから。

なんとしてでもこの牢獄から脱獄してやる。

そのためならもう手段は選んでいられない。


ある日の朝

『あなたの体調の異常を確認しました』

その音声とともに薬が送られてきた。

私はその薬を飲まないことにした。

私が薬を飲まないことで看守がやってくるはずだ、終身刑の者を見殺しにしたなんて事が知れたら世界が許さないだろう。

そのための措置として看守直々に来ると私は考えたのだ。

そうしてきた看守を暴力で制し、人質としてこの牢獄から出る事ができると踏んだのだ。

3日経った。

看守は来なかった。

苦しい

苦しい

苦しい

だが私は、飲まない。

死にたくない、だがここで諦めてしまったら、自由は得られない。

ブレスレットから音声が鳴り続ける

『あなたの体調の異常を確認しました』

『あなたの体調の異常を確認しました』

『あなたの体調の異常を確認しました』

『これより強硬手段に移ります』

来る!!!???

機械の音が響く。

私が待ち望んでいた看守は来なかった。

否、機械の看守が来た。

機械の鞭が伸びる、その鞭が私の体を捉え固定し無理やり薬を飲ませてきた。

私は回復した。ここの薬は素晴らしく効く。

脱獄どころか死ぬ事すら許してくれないようだ。


数ヶ月経った

あれから何度も脱獄を試み

脱獄のために様々な事をしてきた。

死んだふり、狂乱、穴掘り、考えられる限りの手段を試した。

結果は全て機械によって対処されてしまった。

この牢獄からは出ることはできない。

退屈なこの部屋から出るのを諦めた時、私は何気なく窓の外を見た。

あの窓から逃げ出すということも考えたが、位置が高すぎて諦めたため、それ以降見る事はなかった。

だが、今は退屈から逃れるために何でもいいから変化が欲しかった。

窓から見える空は今の私を楽しませるには充分だった。

雲が流れ、陽が落ち、星が見え、そして陽が昇る。

当たり前で退屈でしかなかった空が今では初恋のような新鮮で刺激的なものに感じている。

「そうか、私が自由でありたかったのは刺激が欲しかったからだったのか」

「刺激というものは日常に潜んでいた、犯罪を犯さなくたって得られるものだったんだ」

「あぁ、私はなんて愚かな事をしてしまったのだろう。」

「でも気づけた。君のおかげで気づく事ができたよ。」

「ありがとう。」

私は当たり前のことに気づかせてくれた空に感謝した。

そして、私に刺激を与え続けてくれる空に恋をした。

朝1番に明るい笑顔で微笑みかけ、寝るまで私を見てくれる空に恋をした。

常に顔を変えてくれる彼女に恋をした。

昔からずっと一緒にいたはずなのに、なんで今までこんな素敵なことに気づけなかったのだろう。

私は今、人生で一番幸せだ。


「囚人番号168の懲罰房に異常を発見しました。景色を映し出すモニターに劣化の兆しが見えます。」

「そうか、今度作業ロボットを使って点検をしてみようか」



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