プロローグ
20××年。
日本は戦後70周年を向かえ、第二次世界大戦の悲劇を知る世代から三世代を数えようとしている世代が日本を動かしていく時代を迎えていた。
日本は、近隣東アジア隣国との領海経済水域の境界線争いが日々起こっており、武力による抑止力でにらみ合っている状況が続く昨今であった。
世界でも中東地域での冷戦後の政権争いからの紛争、過激派らによるテロ行為も場所を限定せずに各国で起こっており、予断の許さない情勢が日本にも伝わっていた。
不測の事態に対応すべく、国内でも従来の専守防衛の考え方から同盟国らとともに協調路線を保つために、集団的自衛権の行使を容認。伴う多国間との機密情報に関する管理を徹底するための秘密保護法を制定した。
国民の半数は、そういった安全保障政策に具体的な説明がなく進んだ過程から警戒を示し反対であった。しかし、その反面の半数弱から自国を守るために対策を打つべきだという声が出ている現実もある。現在の世界情勢を踏まえ、20世紀の日本の武力行使放棄の護憲の精神を見直し、一部改定をすべきではないかという議論も広がりを見せようとしていた。
日本の軍隊という見方の強い自衛隊も、昨今の救援・救助活動を通し、評価を受け国民より明るいイメージがもたれる様になり、以前のような軍の足掛けといった暗い考えは影を潜めていた。
そんなことから、政府は防衛力強化を謳った軍拡化を進めようと睨んでいた。
しかし、日本の憲法規定から改憲を早期に推し進めることは難しく、思惑通りには中々進まずにいた。
だが悠長を許さない情勢から政府は、これに対応するべく陸海空それぞれに特殊部隊の設置を行った。
隣接する国家との海上領海問題はすでに他人事ではなく、国民の理解を得やすいという考えのもと海上自衛隊に『J-SEALs』と呼ばれる海上に特化した特殊部隊を創設し、これを公にした。
しかし陸空に関しては、未だ国民の理解を得るに難しい情勢にある。そのため、秘密保護法内で管理できるような形であり、かつ自衛隊の後衛としながら切り離した形での運用を決めた。さらには特殊部隊を5部隊編成にし、緊急時に対応できる機関として創設させたのである。
この陸空に対応する特殊部隊は正式な法制化を持って自衛隊編入を考えていたため、現在は隠密の機関として空白の時間を燈されていた。
そんな特殊部隊の中で、新たに特殊部隊総司令官直属の第7部隊が新設された。全特殊部隊の人員は、自衛隊内より選抜されたエリートを中心に構成されている。そしてこの部隊はその選抜された者たちの、1から5部隊に所属していたが不必要となった人物が行き場所を失い追いやられた部隊と噂されていた。
この物語はそんな部隊にやってきた二人の青年と、若き壮年司令官を中心に対テロの正義の在り方、そしてこの国の行く末を問うものであります。