魔王出現、商業都市壊滅
「話し合いは……、無理なようだ」
「畜生、お前話せても殺すだろう」
「俺を仕事に出すと言う事は、殺すほかに手が無いと言う事だからな」
「確か、にッ!」
アインとサヘルの前で、異形は全身を包む吸い込まれそうなほど黒い鎧を纏うが、その重さを諸共せずに圧倒的な速度で目の前に現れた。サヘルは異形が持つ、大剣の間合いから逃れるため後ろに飛び退くが、それに合わせて異形が接近する。サヘルは体勢を整える暇も無く、迫りくる大剣を両手で持ったランスで防ぐが圧倒的な腕力で振られたその大剣の衝撃を受け流せず、数メートルほど飛ばされてしまった。 異形は勿論それを逃さず接近しようとするが、それは叶わない。アインの一撃が異形の腹部らしき部位に入った。アインは異形の目の前で剣を構えている、刀身が有るべき場所には杯が付いており、そこから燦然と光り輝く粒子が溢れていた、。異形の鎧は易々と貫くことは出来ない、しかしアインの剣は異形の本体にも深い傷を負わせていた。
「化物め、さては貴様魔力を粒子に変換しているな?」
「喋れるのか、しかし前述通りだ。死ね」
杯から粒子が解き放たれた、アインはそれを異形にぶつけると小声でサヘルに作戦を伝える。
「いつも通りにしろ、時間は稼ぐ」
「了解、近寄らせるなよ」
「オオオオオオオオオオオオオッッ!」
異形は膨大な光の衝撃でその場を移動することが出来ない、耐え抜かねば。瞬間異形は握った大剣を自らの肉体へ戻し、今纏う鎧の上へ重ねるように鎧を創りだしていく。そう、それは鎧では無く異形の一部であった。肉体に潜む魔力を絞り出し、さらにその上へと肉体を構築していく。その速度はアインの粒子が鎧を削る速度を完全に上回っており、次第に異形は巨大化していった。
「サヘル、削り切れない。お前に任せるぞ!」
「おう、行くぜ!」
サヘルは魔力の充填が完了する、両手でランスを持ちながらサヘルの横に立つ。そして相槌を打つとアインは光の粒子を抑えそしてサヘルが異形へと突撃した。サヘルは全力で槍を異形の鎧に埋め、頂点から集約された魔力そのものを一度に全て強引にぶつけた。
その一点から異形の鎧は崩れ、ひびが入りそして綻びが解かれたように異形の本体から離れた肉体は朽ちた。そしてその本体も、致命的な傷を
負っていない。
サヘルとアインが気付いたその瞬間、本体である三十路の男の背中から現れた幾つもの触手によって四肢を貫かれ、心臓を貫かれた。男の顔は苦痛と勝利による喜びを合わせたような複雑な表情をしている。
血にぬれた触手は二人の肉体から抜け出し、二人の頭を貫いて、三十路の男の背中の中へと潜り込んでいった。
「化物め、粒子化の魔術を使うとはな。相当削られたぞ」
三十路の男は死体を見ながら、呟いた後二人の心臓を見つけ出してそれを食した。
「頂いたぞ、サヘルイス・コーベンデ、アイン・プロテスタント。魂を」
そのまま男は跳躍しながら居城へと戻って行った。