姉の姉による姉のための独裁政治
朝起きると家には誰も、いなかった。
二階の自室を出るとやはり家のなかは静かだった。
一階のリビングに降りる。やはり誰もいない。
当然だろう、姉は起きるのが遅いのだから。
そうだ、姉が起きる前にたまっていたアニメを見よう。DVDの容量が少なくなっているんだ。
12時を回った。まだ姉は起きない。
昨日は夜更かしをしたのだろう。
そこで電話がなり、
「なー海っち、今から遊ばね?」
友人の健から遊びの電話だ。
「いいよ健ちゃん、今から昼食って出るよ」
残っていた余り物で簡単な昼食を二人分作り、1つはラップをかけ、
「姉ちゃん!昼飯置いとくよ~!」
返事は、ない。
結局、姉の声を一度も聞かないまま、俺は家を出た。
午後6時、帰宅。
「ただいま~」
返事は、ない。
流石におかしい。怪訝に思った俺は二階に上がり姉の部屋の前にたつ。
「姉ちゃん、起きてる?」
返事は、ない。
「入るよ?」
ノックをし、部屋のドアを開ける。
姉の使っている香水が鼻腔をくすぐる。
綺麗に整えたベット。無論、俺がやったもの。
整頓された机。無論、俺がやったもの。
クローゼットを開ける。
しっかりと詰め込まれた姉の服。無論、俺がやったもの。
姉の物が沢山あるこの部屋で、肝心の姉はいなかった。無人の部屋。
今、この家に姉はいなかった。
理由はわからない――が、これは望んだ空間だ。俺は嬉しさの余り、歓喜の声をあげた。
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歓喜の声をあげる俺を、見ている俺がいた。
俺が見ている俺はとても嬉しそうだ。対称的に、俺はどこか落ち着かない。
パズルの1ピースが見当たらないような不安。
くしゃみが出そうで出なそうな…みたいなもどかしさ。
とにかく、不安だった。
何で?何でだろう?何が足りないんだろう…?
俺は気付く。姉が、足りないんだ。
姉はキライだ。色々命令するし、暴力をふるう。
だけど、俺は満足してたんだ。別に、Mになったわけじゃない。親がいなくなって俺を見てくれる人がいないと、思っていたんだ。
でも、姉ちゃんが見ていてくれた。あんまり嬉しくない見方だったけど見てくれたんだ。
「そっか…姉ちゃんの専制政治は必要だったんだな…」
今、この時点で姉の専制政治は終わった。姉の政治は国民に認められた政治。独裁政治になったんだ。
「やっと…専制政治が終わったんだな」
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「いつまで寝てんだ!!とっとと起きろぉ!!」
「ぐふぉ!!」
姉ちゃんの肘が俺の鳩尾に埋まった。
ハイ、最終話になりました。
皆様から数々のメッセージや、感想をもらい、どんなに励まされたことか!!
本当にありがとうございました!!
皆さん、お元気で!!
ご意見、ご要望や、読んでくれた方が余りにも多い場合はseason2も検討しております。