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皇国戦記シリーズ

ヒーローなんていらない

作者: 尚文産商堂

戦争へと突入した日本皇国は、戦意高揚のために、様々な手段を使って戦果を国民へ報道した。

首相官邸のホームページにリンクを張ってある動画は、そのうちの一つだ。

この動画は、昔でいうところのニュース映画になっていて、現在の戦争の様子が刻一刻と楽しめる代物になっている。

だがしかし、この映画に使われている映像は、半分ほどはCGとなっている。

理由は簡単だ。

軍事機密に当たるためという理由で削除されたからだ。


映画に登場した軍人のうち、すでに軍神として祭り上げられている人たちもいる。

陸軍砲兵大曹であった仲之惟正(なかのこれまさ)は、朝鮮半島皇国駐留軍所属の砲兵として、臼砲を曳いていた。

だが、朝鮮半島北部駐留の中国軍が攻めてきた影響で、最前線でライフル銃を手に持ちながら、やってくる歩兵をなぎ倒すという行為に従事していた。

特に、ソウル攻防戦と、のちに呼ばれる戦いにおいて、100名以上を射殺、300名以上を後方送りとした。

彼を死に至らしめたのは、中国軍による奇襲であった。

30分ほど前、1個大隊規模の歩兵がソウル北部へと侵攻。

それに対抗するために、建物に隠れつつ、継続して攻撃を加えたところ、上空より、空中戦に負けた戦闘機が仲之大曹が潜んでいた家めがけて突っ込んできた。

仲之大曹は、この自決攻撃によって即死。

状況からして、敵方も相当の被害を受けていたことは間違いないだろうが、衝撃によって、死体も建物もぐちゃぐちゃになってしまったため、算出不能とされた。

日本皇国政府は、この戦闘によって戦死した仲之大曹を2階級特進として准尉としたうえで、勇敢なる兵士の紹介として、全国へと報道させた。

これは後々わかったことであるが、彼が立てこもっていた建物は、すでに敵によって包囲されており、敵戦闘機が墜落してこなくても、いずれは戦死していただろうといわれている。

遺族は、軍神たる仲之准尉の家族として、ほめたたえられた。

だが、カメラの前に出てきた遺族の代表である彼の妻からは、一言だけしか聞けなかった。

「私の夫には生きて帰ってきてほしかった。ヒーローや軍神なぞにはならずに。ただ、生きて帰ってきてほしかった」

それは、おそらく率直な感想であり、正直な気持ちであっただろう。

政府は、その報道をやめさせることに成功したが、ネットには、すでに広くその映像が流布している。

それだけ、共感を覚えるという者が多かったのだろう。

消されるたびに、増える動画として、今なおネットでは公開され続けている。

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