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#幕間:壱
――こうして、猟師の父様の安否が気になり眠れぬ夜を過ごした猟師の娘。
(幕が引かれ、舞台の端に語り部が現れると再び語り部は語り始める)
――村の男達と猟師の父様が"獣"を討つ為に山の頂へ空が白やむよりも先に、村長の家を抜け出し山へと入った猟師の娘が目の当たりにしたのは頭を砕かれ、臓物を喰い破られ変わり果てた父様の姿であったのだ。
(恐ろしくもあり、盛り上げる弦楽器による囃子)
(語り部は娘の父の死を悼むかの様に、目頭に手を宛がい首を振り、嘆く素振りを見せる)
――だが、娘はその事で取り乱す事も無く父様の傍らに転がっていたテッポウを手に取ると、目の端に溜まる涙を血にまみれた手で拭い、ただじっとその場で亡き父様の骸の前に膝を付き父様に誓う様に告げるのであった。
「セツは、父様の様なテッポウ撃ちになって仇討ちを果たします」
(囃子が鳴り響き、ゆっくりと消える語り部に変わり舞台の中央に立つ一人の娘)
――其処に明かりが照らされると舞台は山の中へと代わる。