表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/22

悪夢

「お兄様!」


サリア・レクマイヤー(14歳)はそう叫びながら起きた。

叫んでから辺りを見回すと知らない部屋で戸惑ったがすぐに寮にいるのだということを思い出した。

久々に見た夢、それは悪夢だ。幼い頃に経験した恐怖の体験が夢となったのだ。


(どうして今頃・・・。)


目が涙ぐみ、身体は汗でびっしょりだ。


(シャワーを浴びなきゃ)


そう思うと気持ちを切り替えて風呂場に向かった。


今はいない自分の兄を思い出すと胸が苦しくなる。居場所はわからない、生きているのか、死んでいるのかさえわからない。消息不明の兄。そんな兄でも彼女唯一の肉親でもあった。


(お兄様、会いたいです・・・)


とうの昔に閉じ込めていた感情があふれ出てくる。学院の入学試験や授業の妨げにならないように心の奥深くに閉じ込めておいたのに。

兄のことを考えると勉強でさえ手に付かなくなる。


(せっかく抑えておいたのに)


シャワーを浴びながら考える。


(あんな夢のせいで)


シャワーのお湯は温かく心地いい、さっきの悪夢を拭い取ってくれそうだ。特徴的な黒髪は濡れ、四肢にまで水滴がしたり落ちる。

悪夢は晴れても想いのほうは晴れなかった。


(お兄様、どこにいるのですか?)


大きすぎず小さすぎず手にちょうど収まるくらいの胸を両手で押さえ、自分の身体を見る。均整の取れた身体、適度な運動、食事を取り、体重にも健康にも気を配った。

大人により近くなった自分を見てくれればきっと、兄も自分を褒めてくれるに違いない。

いつでも会えるようにと、常日頃から自分を磨いている。

なのに・・・。


(お兄様・・・)


「サリアー、起きてるー?朝ごはん行くよー?」


突然、名前を呼ばれ慌てて時計を見る。7時30分を過ぎている。

しまった、悶々としていたため色々忘れるところだった。

急いで支度をする、鞄に教科書に筆箱、ノートを入れ、幼い頃兄からもらった青い石のペンダントを首にかけドアに向かう。


ドアの前には金髪の女の子が立っていた。


「今日は珍しく遅いじゃん~、寝坊?だめだよー、夜更かししちゃ~、お肌の天敵だよー」


「ええ、そうね。ごめんね、おはよう、マリ。」


「おはよー」


食堂に着くと、サリアは朝食セットBを選び適当な席に座った。

今日の授業のことなど他愛のない話をしながら、片付けていく。

食べ終わると、歯磨きをして鞄を持つと寮を出た。


「おーい!」


寮から数分したところで後ろから声をかけられる。

振り向くと褐色に赤い髪の女の子が手を振って追いかけてきた。


「おはよう、お二人さん!」


ドン!とマリの右肩にサリアの左肩に手を叩きつけてきた。


「むー、痛いよー。エル~」


「相変わらずの馬鹿力ね、エル」


「おいおい、二人とも厳しいな~」

はははっと笑うエル。


「今日は遅いな、どうしたんだ?」


「サリアがね~、寝坊したんだよ」


「へぇ、珍しいな」


「寝坊はしてないわよ、マリ。」


「えー、だって声かけたときまだシャワー浴びてたじゃん」


「そのちょっと考え事をしてて・・・」


「ふーん、考え事ねぇ。で、ほんとのところは?」


ただの馬鹿力の割りに鋭いところは鋭いね、エルは。本能かしら、それとも直感?


「おい、今失礼なこと思わなかったか?」


「気のせいよ、その原因は・・・夢なの」


「「夢?」」


「ええ、お兄様の夢を見たの」


「サリアに兄貴がいたなんてな~」


「うんうん、初耳~?ねぇねぇ、お兄さんってどんな感じ?イケメン?」


二人が矢継ぎ早に質問してくる。


サリナは少し悲しそうな目をして静かに告げた。


「お兄様は今はいないわ・・・。消息不明なの」


「え?」


「そ、そうなんだ」


気まずい空気が流れた。


「ごめんね、変なこと聞いちゃって」


「うん、すまなかった」


「いいの、慣れてるから・・・」


そのまま会話は続かず、気まずい空気のまま学校に着くと人だかりができていた。


「何事かしら?」


「なんだろー?」


疑問に思っていると目の前を数人の風紀委員が先生と一緒に駆けて行く。

その中の一人に知り合いを見つけて声をかけるエル。


青髪で長身の女生徒はエルと何度か話しかけるとまた駆けて行った。


「今のレンさんだよねー」


「エル何があったの?」


エルが走りながら戻ってきた。


「なんでもウィンドウルフサークルがやらかしたらしいぜ」


「うぃんどうるふさーくる?」


「そんなサークルあったの?」


「サークルというか同好会みたいなもんなんだけど、目的がケルベロスを召喚するとか色々問題を起こしてるみたい」


「迷惑ね」


「えー、じゃあ今回もケルベロスを?」


「いや、今回は召喚儀式の暴走事故らしい」


「魔物が入ってこなくてよかったね」


「ええ、ほんとに」


教師の一人が手を振りながら生徒を教室に送り始めた。人だかりは徐々に薄れぞろそろと教室に入っていく。


「私たちも急ごう!」


サリア達も急いで教室に向かった。


朝礼では先生から朝の出来事の顛末と色々と注意を延々と聞かされ、慌しい朝だったのにもかかわらず授業は平凡そのもので眠くなりそうだった。エルは爆睡していたが・・・。




一部文章を追加、修正しました。後の伏線的な感じです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ