第9話 欺瞞の白亜、セレステの真実
お読みいただきありがとうございます!ついに到着した学園都市セレステ。しかし、ロアの目に映ったのは、輝きの下に隠された「世界のゴミ捨て場」の姿でした。
学園都市セレステ。三人の目の前に現れたその光景は、レオニスが泥遊びに見えるくらい、びっくりするほど「ピカピカ」で「綺麗」だった。
「……見てください。あれが私たちの誇り、理の集積地セレステですわ」
フィオナが少し緊張した面持ちで指差したその街は、大きな白い島が空に浮かんでいるように見えた。宙を走る純白の軌道。陽光を反射して輝く尖塔。そして街全体を包み込む、透き通った青い防壁。ゴミ一つ落ちていないその光景は、まるで塗りたての絵画のように完璧だった。
けれど、ロアは馬車の降り口で凍りついたまま、動かなかった。彼のゴーグルが、街の本当の姿を暴き出した瞬間――ロアは「うわっ」と短い悲鳴を上げて、自らの目を塞いだ。
「…………う、うわわわぁぁ……!!」
ロアの視界の中。 あんなに美しかった白い城壁は、ただの「薄い紙」のようにペラペラと透けていた。そしてその裏側。街を下から支える巨大な支柱の中、優雅な噴水の底、人々が闊歩するメインストリートの真下には。 あの井戸で目にした「真っ黒な汚泥」が、街全体を飲み込もうとするほどパンパンに詰め込まれていたのだ。 「……ひどいよ……。お姉さん、この街、中身が全部『ゴミの塊』だよ……!」
ロアが顔を真っ青にして叫ぶ。
「ロア……? 何言ってるんだ、お前。……俺の目には、目が眩むほどゴージャスな街にしか見えねぇけどよ」
ラグが不審そうにロアの肩を揺さぶる。
「……違うよおじさん。あの街、外側だけピカピカに見せかけて、いらないゴミを全部地下に隠してるんだ。……ほら、あんなに『キィィィィィィン』って、世界の悲鳴が聞こえるでしょ?」
ロアの指摘通り、街の至るところに立つ尖塔の頂点から、鼓膜を刺すような高周波が鳴り響き続けていた。それは魔法の音ではない。世界という器が限界を迎え、破裂しようとしている『断末魔の音』だった。
「………………ロアさんの言う通りですわ。セレステは世界を美しく保つために、不要と断じたものをすべてこの街の地下へと強引に、不可視のまま隔離してきたのです……」
フィオナが声を震わせ、真実を露わにした。 馬車がセレステの中央広場へと差し掛かった、その時。空を包んでいた安らぎの青い防壁が、突如として禍々しい「深紅」へと変色した。
『――システム警告。集積限界を超過。……整合性維持のため、全パージシーケンスを開始します。……対象:学園都市セレステ全域。……さようなら、不要な(ゴミとなった)住民たち』
街中に響き渡ったのは、冷徹な女性の声。それは神の宣告のように慈悲がなかった。 広場に立つ女神の銅像が、雷に打たれたようにパキリと割れる。その裂け目から、これまで隠蔽されていた真っ黒な汚泥が、泥の津波となって街へと溢れ出した。
「……あ、……あそこに……女の子がいる!」
パニックに陥る群衆の中で、ロアだけが、広場の隅で動かない「一点」を見つけた。 銀色の髪をなびかせ、空っぽの瞳で崩壊する空を見つめている少女。
「……あの子、……すごく綺麗。……でも、ボロボロで寂しそうだよ。お掃除、してあげなきゃ!」
ロアはフィオナの静止を振り切り、馬車から飛び出した。 世界の「ゴミ掃除(消去)」が始まった学園都市。少年の黄金のハンマーピッケルが、その宿命に逆らうようにキラリと輝いた。
(第9話終わり)
ついに足を踏み入れたセレステ。しかしそこは、崩壊を待つだけの「世界の蓋」でした。 次回、ロアは孤独な少女ノエルとの出会いを果たします。
次回を お楽しみに!




