第12話 時の掃除と、学園の異端検体
お読みいただきありがとうございます! 時計塔を救ったロアですが、世界のシステムはそれを「異変」とみなします。 学園都市のエリート・アルゴスとの出会い。ロアの「お掃除」が、学園の常識を剥がしていきます。
時計塔の崩落を光へと変えて救ったロア。だが、セレステの街自体が、その「お掃除」を拒絶するように震え始めた。 空中には幾何学的な亀裂が走り、世界の裏側が覗き見えている。
「ロア! さっさとそこを降りなさい!」
フィオナが、バイザーを明滅させながら瓦礫の下から叫ぶ。
「管理システムが、君の『お掃除』を攻撃と見なしたわ! 都市の防衛機構が起動する!」
「え? でも、お掃除しないと、ここ、すごく息苦しそうだよ?」
ロアの目には見えていた。時計塔の基部、地下に潜む魔導回路の接合部に、ドス黒いヘドロのような「不純物の塊」が、心臓のように脈打っているのを。
ドォォォォン……!
空から、白銀の雷光がロアを焼き払おうと降り注ぐ。 ロアは、ただ無造作にハンマーピッケルを上に掲げた。
トントン。
雷光は、ハンマーピッケルの先端に触れた瞬間、キラキラと輝く光の粒子へと分解された。
パリン。
涼やかな音が響、攻撃そのものが「剥離」されて消滅する。
「なっ……雷撃そのものを『剥し』やがった……!?」
ラグが絶句する中、ロアは塔の根元にある「黒い心臓」へと辿り着いた。
ズドン。
ハンマーピッケルがその塊を貫いた瞬間、都市全体が大きな安堵の溜息を吐いたかのように静穏を取り戻した。 詰まっていた情報が本来の回路へと流れ込み、空の青さが本来の色を取り戻して街を照らした。
「……ふぅ。これで、少しは涼しくなったかな!」
ロアはハンマーピッケルを腰に戻し、広場で言葉を失っている魔導士たちを見下ろした。
◇
昨日の喧騒が嘘のように、セレステの朝は静かだった。 フィオナの手配により、ロアは「学園の特待生」という立場で監視下に置かれることになった。
「お掃除のライセンスをもらった、ってこと?」
「……目立つ真似はしないで。ここは均衡を重んじるエリートたちの巣窟なんだから」
学園への初登校。ロアは銀のバッジを胸に、白亜の回廊を歩く。 そこで出会ったのが、名門の次男、アルゴスだった。
「おい、貴様。フィオナ教授の『拾い物』というのはお前か。……魔導バイザーも付けず、平然と学園を踏むとは、不潔なドブネズミめ」
彼の纏う『雷神の衣』は、周囲に激しい放電を撒き散らし、歩くたびに石畳を焦がしていた。
「……えー。きみ、その服を着ている間、ずっと皮膚が針で刺されてるみたいじゃない? すごく、痛そうな音がしてる」
アルゴスの眉間に、ピクリと動揺が走る。
「……何を……。これは高貴な代償だ。力を得るには、相応の痛みが伴うのが世界の理だ」
「誇りのために痛いのを我慢するなんて、爺ちゃんに言わせれば『お掃除のサボり』だよ? ……きみの誇り、そんなに汚れてなくてもいいんだよ?」
「黙れ……! 無知な部外者が、私の覚悟を汚すな!」
激昂したアルゴスの放電が、廊下を白く焼き焦がす。一触即発のその時、廊下の奥から鋭い声が響いた。
「そこまでよ、アルゴス」
フィオナが、分厚い魔導書を手に歩み寄ってきた。その威圧感に、アルゴスの雷光がしゅんと萎む。
「特待生の彼に手を出すのは、私への不敬と見なすわ。言い分があるなら、数日後に行われる『ランキング戦』の舞台で証明しなさい」
アルゴスは吐き捨てるようにロアを睨みつけ、踵を返した。 フィオナは溜息をつき、ロアの肩を叩く。
「学園という場所は、君が思っている以上に『汚れ』を重んじる場所なの。……覚悟しておきなさい、お掃除屋さん」
ロアは首を傾げながら、遠ざかるアルゴスの背中を見送った。
「……汚れを大事にするなんて、やっぱりここも、変な場所だね」
(第12話終わり)
読んでくださりありがとうございます! エリート校で浮きまくるロア。アルゴスとの対決の行方は……。 そして次回、ロアが学園の「味気ない食事」に物申します!
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