第10話 見捨てられし検体、ノエル
お読みいただきありがとうございます!崩壊を始めたセレステ。システムから「ゴミ」として処理されようとする少女ノエルを前に、ロアのハンマーが真実を剥き出しにします。
――ギギギ、ガガッ……!
空から降ってくるのは、鳥の羽ではない。テクスチャの剥げ落ちた、真っ白な「世界の残骸」だ。美しかったセレステの「皮」が、古い日焼けのようにペリペリと剥落し、街全体がノイズに染まって明滅を繰り返している。
混乱が極まる広場の中心。逃げ惑う人々の中で、ロアはついにその少女の元へ辿り着いた。 少女は、何も見ていなかった。降り注ぐ瓦礫も、溢れ出す黒い汚泥も、まるで自分には関係のない景色であるかのように、空っぽの瞳で消えゆく空を見つめていた。
「……あ、……あはは。綺麗だね」
ロアは息を呑んだ。 周囲のすべてが醜いノイズと悪臭に染まり、崩れ去っていく中で。その少女だけが、一点の曇りもない「透明な光」を放っていたのだ。彼女は汚れたキャンバスの上に描き出された、唯一の、そしてあまりに鮮烈な「真実の存在」だった。
「……見つけましたわ。……廃棄予定の欠陥検体。そして、それを保護しようとする……最大級の不純物」
上空。巨大な「レンズ」の形をした無機質な魔導器が、滞空しながらロアと少女を見下ろしていた。 それは感情を持たない世界の管理者たちだ。彼らにとって、整合性を乱す少女も、理を剥がすロアも、等しく「消去すべきデータ」に過ぎない。
「……この子はゴミじゃないよ! こんなに綺麗なのに、お掃除しようとするなんて、きみたちの方が間違ってるんだ!」
ロアが叫ぶのと、管理者が放った「すべてをゼロにする光」が放たれるのは同時だった。
「お掃ーー除……完了っ!」
冷徹なプログラムの声。すべてを無しにする光の奔流が少女を飲み込もうとした、その刹那――。
ドゴォォォン!!
黄金の閃光が、その破壊の光を真っ向から叩き割った。
ロアはハンマーピッケルを構え、少女を背中に隠すようにして立ちはだかった。 黄金の波紋が広がり、管理者の放った「消去」の命令を、ただの「光の粒子」へと剥離させていく。
「…………え?」
初めて、少女の瞳に色が宿った。 自分をゴミとして処理しようとする世界の中で、ただ一人、自分を「綺麗だ」と言って守ってくれた少年。その背中に、少女――ノエルの凍りついた心が、微かに揺れた。
「……大丈夫。お掃除なら、僕が得意だもん。……ねえ、一緒に行こう! ここよりずっと綺麗な場所、僕が探してあげるよ!」
ロアはニコリと笑い、少女に手を差し出した。 崩壊する学園都市の広場で、二人の「宿命のエラー」が重なり合った。
ご覧いただきありがとうございました!
ノエルを救い出したロア。二人の運命が重なり合います。 物語はここから学園生活編へと突入していきます!
次回を お楽しみに!




