プロローグ
時刻は00時00分。
その日はオレの誕生日だった。
「待てよ、朝陽。オレは嫌だよ、こんな……」
先程までキスをして体を重ねて、愛し合っていたはずだった。
床に落ちた苺タルトケーキにこぼれて床を汚していくシャンパン。
オレたちの関係は変わってしまった。
「この印が出たってことはなぁ、俺たちは敵同士になったんだよ」
優しかった瞳は今、敵意でオレを見下ろしている。
オレたちが何をしたっていうんだ。
ーーいいかい、暖、覚えておきなさい」
父さんの声が頭に蘇る。
「これはなーに?」
父さんは1枚の絵を見せてくれた。
そこに描かれていたのは椿の花。そしてそのすぐ下には花を支える椿の葉。
周りはそれを守るかのように囲んだ円だった。
「まだ暖は5歳だけど、15年後。暖は戦わなければならない」
「いやだ!こわい!」
「大丈夫。だからこうしていつも父さんと負けないように練習しているだろう?」
父さんは優しくオレの手を握る。だけど、目は真剣だった。
「暖の背中にはこの椿の花だけが現れるよ」
オレは椿の花を両手で消す。すると葉っぱと円はなんだか花がなくなると寂しくなった。
不思議な感覚。欠けてはいけないものが欠けてしまったようだった。
「葉っぱと円は暖とは別の子の体に現れるよ」
父さんはオレの肩を抱きしめる。どこか辛そうな表情をしていた。
「その印集めたら何かあるの?」
父さんはオレの頭にそっと手を置いた。
「神様が一つだけ願いを叶えてくれるよ」
「オレ、ケーキいーーーっぱい食べたいってお願いしたいなぁ」
「それもいい考えだね!」
お父さんは少し悲しそうな顔で笑った。
「だけどね、その印を集めた人しか願いを聞いてくれないんだ」
「えー!喧嘩になるよ!神様いじわるだね」
「そうだね。ごめんね。だけど、それが僕たちの試練だよ」
「なんかよく分かんないけど、分かった!」
父さんはオレを抱きしめる。
とても悲しそうだった。
父さんが悲しい顔をしていた理由を最悪な形で知ってしまった。
「……っ」
目元が熱くなる。目尻から涙が流れたのがわかった。
好きな人は本当に敵になってしまったのだとオレは身をもって知ってしまった。
オレの誕生日なんて来なければ良かったのに。




