表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/18

第九話:国境砦の「資産洗浄」作戦


「リネット、お前の作ったその試作品……本当に使えるんだろうな?」


雪のちらつく国境付近。レオンは、勇者ルートの知識で「隣国の汚職貴族が裏金を溜め込んでいる」と特定した国境砦を見下ろしていた。


隣に立つリネットは、巨大なレンズが幾重にも重なった不気味な筒状の魔道具を調整している。


「……名前は『ピンポイント・収税デリバリーカノン』。標的の防壁魔力だけを中和して、無傷で『中身』を転送するための指向性兵器……。予算不足で射程は短いけど、効果は保証する……」


「宝箱の中身を手に入れるだけの道具ってことだな。よし。ハンス、フェリス、準備はいいか?」


レオンの背後には、漆黒の外套を纏った領主軍が息を潜めている。


ハンスは大きな空の麻袋をいくつも抱え、フェリスは正義の執行を確信した凛々しい顔で剣を握っている。


「坊ちゃん、準備万端でさぁ! 金貨の匂いがプンプンしやがる!」


「閣下、あの砦は本来、我が国の物流を不当に阻害する悪徳貴族の拠点。これを取り払うことは、正義そのものです!」


(いや、単なる強盗なんだけどな……。まあ、みんなのやる気があるならいいか)


「作戦開始だ。リネット、やれ!」


リネットが魔力を流し込むと、レンズが青白く発光した。無音の衝撃波が放たれ、砦を覆っていた強固な防壁が、まるでガラスが割れるように霧散した。


「今だ! 全員突撃! 金庫室へ直行しろ! 抵抗する奴は峰打ちで十分だ、殺すと後味が悪いからな!」 (※殺すと後で国際問題になって、俺のニート生活が脅かされるからだ)


「「「うぉぉぉぉ!! 徴収だぁぁぁ!!」」」


砦の中はパニックに陥っていた。 「な、何事だ!? グラウス公爵家の旗だと!? なぜあんな悪役面レオンが攻めてくる!?」


慌てふためく守備兵たちを、フェリス率いる騎士団が鮮やかに無力化していく。


一方、ハンス率いる剥ぎ取り部隊は、驚異的な速さで宝物庫の扉をこじ開けていた。


「出たぁ! 坊ちゃん、見てください! 金塊に、隣国の裏取引の証拠品が山盛りだ!」


「ひっひっひ……! これだよ、これ! これでリネットに最高級の工房を作ってやれるし、俺の寝室の壁も厚くできる!」


レオンは金貨の山を前に、悪役全開の笑みを浮かべていた。だが、そこに追い詰められた砦の司令官が震えながら叫んだ。


「貴様……こんな暴挙、ただで済むと思うな! 聖教国に通報してやる! 略奪者レオンとしてな!」


レオンは冷たい目で司令官を見下ろし、拾い上げた「裏取引の台帳」を突きつけた。


「略奪? 人聞きが悪いな。俺は、お前たちが不正に溜め込んだ『不当利益』を、領地の防衛基金として『接収』しに来ただけだ。それとも、この台帳の中身を王都の広場に張り出されたいか?」


「う……ぐっ……」


「嫌なら、お前らも今すぐここを去れ。命は助けてやる。……セバス、残された備蓄品も全部積み込め。兵士たちの冬のボーナスにするぞ」


数時間後。砦はもぬけの殻となり、レオン一行は莫大な富と共に悠々と引き上げていった。


「若様、さすがにございますな」 セバスが、重そうに宝箱を運ぶ馬車を眺めながら頷く。


「あえて『悪党から奪う』という形を取ることで、自らの資金を稼ぐと同時に、隣国の膿を出し切る。


その奪い取った金で、我が領の民を冬の寒さから守る……。若様の後ろ姿、もはや聖者の後光が差しているようです」


「……セバス、お前、さっきから目が霞んでるんじゃないか?」


「いいえ。若様が金貨を数えるあの邪悪な……いえ、真剣な眼差し。それこそが、民の生活を背負う者の重圧なのだと、フェリス殿と語り合っていたところです」


レオンは遠い目をした。


自分はただ、今後の防衛費と遊興費をカツアゲしただけなのだが、気づけば「隣国の巨悪を挫き、民に富を配る義賊」のような扱いになっている。


(まあ、いい……。これで金は貯まった。次は……リネットに、俺を絶対にベッドから動かさない『究極のぐうたらシステム』を作らせよう……)


しかし、レオンの預かり知らぬところで、今回の「砦強襲」は大きな波紋を呼んでいた。 王都の教会。そして勇者アルスのもとに、一通の報告書が届く。


『グラウス領主、レオン。隣国の汚職を暴くため、独断で軍を動かし、巨万の富を民のために接収……。これぞ、我らが求める「真の騎士道」なり』


「レオンさん……。あなたは一人で、そこまで大きな戦いを……。僕も、すぐに行きます!」


何も知らない勇者が、熱い涙を流してグラウス領へ向けて出発した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ