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第五十四話:帝国の「最新兵器」vs リネットの「試作品」


帝国の誇りであった重装魔導戦車部隊は、わずか数分で泥濘に沈み、沈黙した。 バルカス将軍を筆頭とする帝国兵たちは、マントも鎧も、さらにはブーツさえも「賠償金」として差し押さえられ、下着同然の姿で国境へと追い返された。


「……リネット。この鉄の塊、どうにかなるか? デザインが野暮ったすぎて、領地の景観に馴染まないんだが」


レオンは、接収したばかりの戦車を指差し、嫌そうに鼻を鳴らした。


「……問題ない。装甲はリサイクル。動力源の魔導炉は……少し弄れば、領地内の『全自動床暖房システム』の予備電源に転用可能。……あ、でも一台だけ。面白い『試作品』のテストベッドにする」


リネットの目が、怪しく輝いた。


数日後。 敗走したバルカス将軍が、命からがら帝国の首都へと辿り着き、皇帝に「グラウス領の怪異」を報告していたその時である。


「報告! 報告します! 国境線より、正体不明の巨大な影がこちらに向かっています! その速度……時速百キロメートルを超えています!」


「何だと!? 我が国の魔導戦車でも時速二十キロが限界だぞ!」


皇帝が窓から外を見下ろすと、地平線の彼方から砂塵を巻き上げ、凄まじい轟音と共に「それ」がやってきた。


それは、かつて帝国の誇りだった魔導戦車をベースに、リネットが魔改造を施した代物だった。 野暮ったい装甲はすべて剥ぎ取られ、流線型のクロームメッキに輝くボディ。車体からは青白い魔力の炎が噴き出し、もはや戦車というよりは「巨大な魔導レーシングカー」と化している。


その車体の上には、優雅にティーカップを手にしたレオンが、振動を一切感じさせないリネット特製の「慣性制御ソファ」に座っていた。


「……止まれ。ここが帝国の首都か。相変わらず、無駄に豪華なだけで住み心地が悪そうだな」


レオンの声が、拡声魔導具を通じて帝都中に響き渡る。 慌てて迎撃に出ようとした帝国の魔導師団だったが、改造戦車から放たれた「無力化の波動(対魔ジャミング)」を浴びた瞬間、杖から魔力が消え、地面に膝をついた。


「……おい、皇帝。聞こえるか。お前たちが送り込んできた『粗大ゴミ』の処分費用だが、金で払うのが無理なら、この戦車を今からこの街で暴走させて、街の更地化(再開発)を手伝ってやってもいいんだぞ?」


「な、何という……。あれは我が国の最新兵器ではないか……。あんな動き、物理法則を無視している!」


皇帝は、空飛ぶ絨毯のように滑らかに、かつ圧倒的な破壊力を秘めて爆走する「元・自国の戦車」を見て絶望した。


「……セバス、もういい。帰るぞ。帝国の空気は俺の肌に合わん。……皇帝、契約成立だ。今から一時間以内に、帝国が保有する『古代魔導図書館』の閲覧権を俺の領地へ譲渡しろ。さもなくば、この戦車の『自動暴走モード』をオンにして、俺は昼寝に戻る」


「ま、待て! 分かった! 譲渡する、すべて譲渡するから帰ってくれ!」


こうして、レオンは一歩も歩くことなく、帝国の国家機密である知識を「接収」した。 リネットの「試作品」によるデモ走行は、帝国の軍事的な野心を完膚なきまでにへし折り、レオンの領地にさらなる富と、誰にも邪魔されない「絶対的な静寂」をもたらしたのである。

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