第五十一話:鉄壁の「自動防衛ライン」
「……リネット、一旦止めろ。弾薬(魔石)の無駄だ。あいつらの装備を全部合わせても、一発分のコストにすらなりゃしない」
モニター越しに、光の礫で次々と無力化されていく騎士たちを見て、レオンは退屈そうに欠伸をした。
リネットが「了解……。自動排除モード、スタンバイへ移行」と指を動かすと、戦場を支配していた轟音と閃光が、嘘のように止んだ。
境界線に広がるのは、恐怖で腰を抜かし、泥まみれになって震える一万の「敗残兵」だった。
エドワード王子は、自慢の金色の鎧を泥で汚しながら、目の前で起きた「理解不能の虐殺(未遂)」に口をパクパクとさせている。
「……ハンス、出番だ。あそこに転がっている不法投棄物どもを回収してこい」
「へいへい、若様。……野郎ども、聞いたか! 掃除の時間だ! 傷一つ残さず、綺麗に『接収』してやるぜ!」
レオンの合図と共に、境界線の地下から隠しハッチが開き、ハンス率いる私兵団が姿を現した。
彼らが身に纏うのは、リネットが開発した最新の「外骨格型魔導アーマー」。蒸気と魔力を吹き出しながら重厚な足音を立てて進むその姿は、騎士たちの目には死神の軍勢に見えた。
「ひ、ひぃっ……来るな! 私は王子だぞ! この国の次期国王だぞ!」
エドワードが情けなく叫びながら、這いずって逃げようとする。だが、その背後にハンスが影のように立ちふさがった。
「王子様よぉ、悪いがうちの若様は『ゴミの分別』には厳しいんでね。……お前さんは、一番処分の面倒な『有害廃棄物』だ。特別に頑丈な檻を用意してあるぜ」
「や、やめろ! 放せ! 略奪だ! 略奪を許可するから私を助け――ぶっ!?」
ハンスの無造作な蹴りがエドワードの腹にめり込み、王子の言葉は濁った音に変わった。
「略奪? ……笑わせんじゃねぇ。若様の芝生を一歩踏み荒らしただけで、お前らの命はもう若様の『備品』なんだよ。死ぬまで働いて、この芝の修繕費を稼いでもらうぜ」
数時間後。境界線付近は、一万人の騎士たちが一列に並ばされ、武器や鎧をすべて剥ぎ取られるという異様な光景に包まれていた。
「……セバス。こいつら全員を収容する施設(監獄)の維持費を計算しろ。食費が嵩むようなら、即座に王都へ請求書を送れ。拒否するなら、王宮の門を担保として物理的に剥ぎ取ってこい」
レオンは、望遠鏡を置いてふかふかのソファに深く沈み込んだ。
「かしこまりました。……エドワード殿下の身代金として、王都の北側にある『魔石鉱山』の利権を要求するのがよろしいかと。あれがあれば、若様の寝室の冷房効率がさらに三割向上いたします」
「……ほう、それはいい。安眠のためなら、多少の交渉(脅し)は惜しまん」
レオンは満足げに目を閉じ、静かに微笑んだ。 一万の軍勢を一人も領内に入れず、逆にそのすべてを「労働力」と「賠償金」に変える。
悪徳領主の「徹底的な防衛(お掃除)」は、エドワードという不良債権を完膚なきまでに処理し終えたのであった。




