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第四十一話:不当な「差押え」と、最強の「異議申し立て」


グラウス領の表通りに、場違いなほど着飾った一団が現れた。王都の法衣を纏った役人と、その背後に控える騎士たち。彼らの目的は、今や「独立辺境伯」として絶大な権力を持つレオンではなく、その側近であるフェリスだった。


「フェリス・フォン・ベルシュタイン! 貴様の父、ベルシュタイン前伯爵が王都に残した債務、および反逆の嫌疑に伴う罰金、合計金貨十万枚!……その支払いが滞っているため、身柄を接収(拘束)しに来た!」


役人の言葉に、フェリスの顔が青ざめる。彼女の家は、無実の罪を擦り付けられて没落した。かつての「因縁」が、今になって彼女の平穏を奪いに来たのだ。


「……そ、そのような法外な……! 私はもう、ベルシュタインの名は捨て、レオン閣下の騎士として……!」


「黙れ! 閣下であっても、王国の法、そして『負債の連鎖』は無視できん。――さあ、連れて行け!」


役人の騎士たちがフェリスに手をかけようとしたその時。 背後の豪華なカフェ(領主専用テラス席)から、氷のように冷たい声が響いた。


「……おい。俺の領地で、勝手に『接収』という言葉を使うな。その権利があるのは、この街で俺だけだ」


レオンが、リネット特製の「自動追従式・日傘」を伴ってゆっくりと立ち上がった。その目は、明らかに「昼寝を邪魔された怒り」に満ちていた。


「レ、レオン辺境伯……! これは王都の正式な法に基づく執行です! 彼女の家の借金は、王家の債権として確定しており――」


「債権?……ふん。セバス、出せ」


レオンが指を鳴らすと、セバスがいつの間にか役人の目の前に立ち、厚い書類の束を叩きつけた。


「これは……? 帝国銀行の……『債権譲渡証明書』……!?」


「説明してやる。……お前らが『借金』と呼んでいるそのベルシュタイン家の負債、三日前に俺が帝国経由ですべて『買い取った(接収した)』。つまり、フェリスの債権者は王都ではなく、俺だ」


役人は絶句した。レオンは帝国への賠償金請求のついでに、フェリスの家を陥れた連中や、彼女に難癖をつけそうな組織の「債権」を片っ端からマネーゲームで買い叩き、手中に収めていたのだ。


「いいか。フェリスは今、俺の『専属護衛』として、年間契約で働いている。彼女が返すはずの金は、俺が彼女に支払う給料から、向こう五百年かけて『天引き』することになっているんだ」


レオンは役人の胸ぐらを掴み、至近距離からドスの効いた声で囁いた。


「……つまりだ。お前らが彼女を連れて行くということは、俺の『未回収の資産』を横領しようとする行為だ。――王国法第十二条『債権行使の妨害』。今すぐここから消えなければ、お前らの一族すべての債権を俺が買い取り、明日から全裸で帝国まで土木作業に行かせてやってもいいんだぞ?」


「ひ、ひぃっ……!! も、申し訳ございませんでしたぁ!!」


役人たちは、レオンの「資産(と昼寝)への異常な執念」に恐怖し、転がるように逃げ出していった。


「……か、閣下……。私のために、それほどの巨額を……」


膝をつき、感極まって涙を流すフェリス。だがレオンは、忌々しげに顔を背けた。


「勘違いするな。お前を連れて行かれたら、代わりの騎士を雇う求人広告費コストがかかる。……お前は一生、俺のために働いて、利子を含めてきっちり返せ。……分かったら、さっさと俺の肩を揉め。書類仕事で凝ってるんだ」


「はい……! はい、閣下! 喜んで、末代までお仕えいたします!」


(……よし、これでフェリスの身柄は完全に俺のものだ。王都の連中も、もう手出しはできない。……さて、次はあの役人の実家の土地でも買い叩いて、俺の『別荘用ゴルフ場』にするかな)


レオンの「歪んだ救済」は、今日も一人の忠義者を、幸せな『永遠の納税者』へと変えていくのであった。

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